肝蛭のアレルゲン系統間マウスの粗抗原に対するIgE抗体産生能とその産生条件
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概要
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寄生蠕虫感染は宿主内に特異的なIgE抗体を誘導するばかりでなく,虫に無関係な不特定多数の抗原に対するIgE抗体の産生をも増強(potentiation)する.しかし,蠕虫由来の抗原で免疫すると,これらのIgE抗体の産生は難しいとされてきた.われわれは肝蛭のアレルゲンの性質を知るために肝蛭粗抗原の免疫活性を調べたが,適当な条件下で粗抗原で免疫すると,マウスは比較的高タイターのIgE抗体を産生した.すなわち,PCA反応の条件としては,ウイスター系雄性(150g)のラットを用い,チャレンジ抗原量は2.5mg以上とすること,またIgE抗体産生にはマウスを粗抗原10γで5日間5回免疫する方法か,20γを20日間隔で2回免疫する方法が良いこと,アジュバントとしては水酸化アルミニウムゲルが優れていることなどが明らかにされた.ICRマウスを20γ,20日間隔2回免疫すると,2^6以上のIgE抗体価を少なくとも1週間以上持続した.また,inbred strain 4種,hybrids 2種,closed colony 6種のマウスについて,IgE抗体産生能を比較検討した.inbredではDBA/2系が最もよく反応し,次いでBALB/c系の順であった.hybridsのなかでは,このC57BL/6とDBA/2とのF_1マウスが最もよく反応し,両親より高いIgE抗体を産出した.しかしclosed colonyのdd系やICR系のマウスのIgE抗体産生能は低かった.なお,このIgE抗体産生能と肝蛭の感染に対するマウスの抵抗性との間には,何ら有意な関係は見出せなかった.IgE antibody formation was easily demonstrated from the hosts infected with Fasciola hepatica. But, it was known to be difficult that the hosts immunized with antigen extracted from F. hepatica produced IgE antibody. IgE antibody, however, was produced relatively easily in the mice immunized with crude antigen of F. hepatica in our experiments. Namely, over 2.5mg of challenge antigen per rat was necessary for better reaction of PCA test and male Wistar strain of rat weighing 150g was better as a recipient animal. The best condition for the high titer of IgE antibody production was to immunize mice with 5 times stimulation of 10γ of antigen in 5 days, or with 2 times of 20γ at 20 days interval. Among adjuvants, aluminium hydroxide gel was best for the induction of IgE antibody in mice. ICR mice immunized with 20γ at 20 days interval produced over 2^6 titer of IgE antibody at least one week. The IgE antibody production was compared among four inbred mouse strains, two of their hybrids and six outbred strains. The inbred strains of DBA/2 and BALB/c and their hybrids, (C57BL/6×DBA/2)F_1 and (BALB/c×DBA/2)F_1 produced the highest titer of IgE antibody. On the other hand, outbred strains of ddY, ddN and ICR produced the low titer of IgE antibody.
- 長崎大学熱帯医学研究所,Institute of Tropical Medicine, Nagasaki Universityの論文
- 1982-03-31
著者
-
藤田 紘一郎
東京医科歯科大学 大学院 国際環境寄生虫病学分野
-
藤田 紘一郎
Section Of Environmental Parasitology Department Of International Health Development Division Of Pub
-
月舘 説子
東京医科歯科大学医学部医動物学教室
-
月舘 説子
東京医科歯科大学 大学院 国際環境寄生虫病
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