諫早湾調整池から排水された高濁度水の湾内における短期的な挙動の解明
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概要
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諫早湾潮受け堤防からの排水の挙動を捉えるために,諫早湾内に9定点を設け,2012年9月18日から19日にかけて合計6回の高頻度観測を実施した。調整池の懸濁粒子(SS)および懸濁態有機炭素(POC)濃度に排水量(2.3×10^6m^3)を乗じて算出した排出量は326×10^6g(SS)および13.3×10^6g(POC)と見積もられた。一方,これらの排出量は,排水後の排水門近傍における増加量の16%ならびに25%に過ぎず,排水時には堆積物の再懸濁が顕著である可能性が示された。水柱のSSおよびPOC濃度の時間変化とストークスの最終沈降速度をもとに検討したところ,SSについては少なくとも水柱に3時間懸濁したことから,10μmより小さい粒子が主であり,POCは排水から3時間後には濃度が排水直後の2割程度にまで低下したことから,POCの約8割が沈降により水柱から除去される大型の粒子(粒径:10μm以上)であった可能性が高い。炭素安定同位体比の観測結果によると,排水から3時間後,排水門近傍の水柱に残されたPOCの8から10割が調整池由来の有機物であることが示された。さらに,排水から21時間後には,湾内に低塩分水のパッチが観測されなかったことから,粒径が10μm未満の小型粒子は下げ潮時に湾外へと流出する可能性が示唆された。
- 2014-01-15
著者
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