日本語文処理におけるleft-corner parsingとワーキングメモリー負荷研究(人間の言語処理と学習)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
この研究では、日本語の文処理において、従来のbottom-upやtop-downなどの文処理方略に対してleft-corner parsing (LCP ; Abney & Johnson, 1991など)を支持する実験的検証を行う。LCPでは、主節のTP節点とVP節点は動詞が読まれるまで結合されない。そのため、VP内の付加部(adjunct)は目的格(与格や対格)NPのようなVP内の構成素に対してのみワーキングメモリー負荷を増大させる一方、VP接点より外の主格NPなどの要素に対しては増大させない。これによって、VP内の付加部での読み時間は、最初の名詞句が目的格の場合、主格に比べて長くなるという予測が導かれる。今回の読み時間実験での結果はこの予測通りであった。この結果は付加部のワーキングメモリー負荷は、最初の名詞の助詞によらず一定だとするdependency locality theory (DLT; Gibson, 1998; 2000, Nakatani & Gibson, 2010)の予測に反するものであり、LCPに基づくワーキングメモリーモデルを支持するものであった。
- 2013-07-27
著者
-
伊藤 たかね
東京大学大学院総合文化研究科
-
広瀬 友紀
東京大学大学院総合文化研究科
-
伊藤 たかね
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
-
内田 翔大
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
-
宮本 エジソン
筑波大学人文社会科学系
関連論文
- 意味と面白さを維持する自然言語情報の開示制御技術の提案 : SNSのプライバシー保護への試適用(セッション8-C : セキュリティマネジメント(2))
- The Minimal English Test : Its Correlation with the College Entrance Examination (English Part) 2004
- 日本語の形容詞句付加における構成素の長さ効果 : 事象関連電位を用いた検証(人間の言語処理と学習)
- 日本語格違反の処理に関わる事象関連電位研究(人間による言語理解・言語処理)
- 形態論の認知脳科学 (特集 形態論が拓く言語研究の可能性--カタチが伝える、コトバのしくみ)
- 言語処理.の心内・脳内メカニズムを探る : 日本語使役構文の事例から(言語の学習・教育)
- 日本語動詞のLCS推定に関して : 他動詞を中心に(辞書構築)
- 意味と面白さを維持する自然言語情報の開示制御技術の提案 : SNSのプライバシー保護への試適用(セッション8-C : セキュリティマネジメント(2))
- 第五部門 Mental Lexicon の理論をめざして-"Productivity の概念を中心に
- 日本人英語学習者の英語における主語動詞の数(不)一致に対するオンライン処理時の敏感度(学習,人間の言語処理と学習)
- 日本語文処理におけるleft-corner parsingとワーキングメモリー負荷研究(人間の言語処理と学習)
- 日本語の関係節修飾曖昧性における任意の再分析(人間の言語処理と学習)
- 日本語受動文の産出における構造的プライミング効果 : 動詞の反復効果の観点からの検討(人間の言語処理と学習)
- 日本語の関係節処理における線形的距離の効果について(人間の言語処理と学習)