第79回東京女子医科大学学会総会シンポジウム「放射線治療の最近の進歩」(2)頭頸部癌の放射線治療
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概要
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放射線治療は,機能・形態の温存に優れているという特徴から,頭頸部癌の根治的治療に従来より大きな役割を果たしてきた.頭頸部癌の治療法の選択は,主に原発部位や臨床病期,病理組織により決定されるが,近年では臓器温存に注目が集まり,従来では外科的治療を行われていた症例に対しても臓器温存を目的とした化学放射線療法がおこなわれるようにもなってきた.しかし癌が治癒し長期間生存する症例が増えるとともに,化学放射線療法により形態学的には臓器温存がされていても,長期的にみた嚥下障害などの機能の低下や,口腔乾燥症や下顎骨壊死などの晩期有害反応が問題となってきた.早期喉頭癌など,照射する範囲が限局できる疾患では,機能を保持し生活の質を維持することは,従来の放射線治療でも充分に可能である.しかし上咽頭癌や中咽頭癌など,リンパ節転移を比較的生じやすく,かつ脊髄・脳幹部や唾液腺など生体機能の維持や生活の質を左右する正常臓器が近傍にある癌では,腫瘍に対し根治線量を投与しつつ周囲の正常組織を避ける放射線治療は従来の三次元的な照射方法では困難であった.しかし近年コンピュータ技術の進歩等により強度変調放射線治療(IMRT:Intensity modulated radiation therapy)などの新たな治療方法が開発され,頭頸部癌の放射線治療においても大きな役割を担うようになってきた.IMRTとは高エネルギーX線を用いた,照射野内の照射強度を変えることにより標的の形状にあわせて線量集中度を高める照射方法である.この技術を用いることにより,脊髄や耳下腺,粘膜やその他の重要臓器にはより照射線量を少なくした上で,標的に対しては大きな線量を投与することが可能となり,頭頸部癌の放射線治療は大きく進歩した.今回の論文ではIMRTの概要を述べるとともに,頭頸部癌の部位ごとのIMRTの現在における役割に関し文献的考察もおこなった。
- 東京女子医科大学の論文
- 2014-04-25
著者
-
泉 佐知子
東京女子医科大学病院放射線科
-
橋本 弥一郎
東京女子医科大学 医学部放射線医学教室
-
三橋 紀夫
東京女子医科大学 放射線科
-
三橋 紀夫
東京女子医科大学医学部放射線腫瘍学講座
-
石井 由佳
東京女子医科大学医学部放射線腫瘍学講座
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