制御主体の違いが不安反応に及ぼす影響(原著)
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概要
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本研究は,制御可能性の判断を構成している回避確率と自己管理確率のいずれの成分が不安低減効果をもっているのかを調べるため,直列回路につながれた2人の被験者の電撃回避手段についての関係性について操作を加え,ペアとして考えた場合の回避確率と自己管理確率の違いが脅威事態の嫌悪度評価や電撃到来予測状況下における心拍変化にどのような違いを生ずるかを検討した。被験者は男子大学生54名。回避事態としては,直列回路につながれた2人の回避手段に対する相互依存的関係の違いにより,AND条件・OR条件・自己管理条件・他者管理条件の4条件を設定した。まず,質問紙調査を行い,一対比較法によって4条件の嫌悪度を回答させた。その後,4種類の回避条件を実際に操作設定し,回避条件の違いが回避反応や電撃到来予期期間の心拍変化に及ぼす影響を調べた。その結果,質問紙調査においては,OR条件,自己管理条件,他者管理条件,AND条件の順に回避条件の選択確率が低くなり,次第に嫌悪度が高くなっていることがわかった。つまり,回避確率が高く,しかも,自己管理の可能性が高いほど好ましい事態とみなされるという結果になった。しかし,実際の回避事態においた場合の生理的覚醒の程度はこれとは異なり,他者管理条件が最も心拍は低く,自己管理条件の心拍が最も高くなっており,回避確率においても最も大きな差のみられるはずのAND条件とOR条件の問には心拍水準においてあまり違、・がみられないという結果が得られた。回避確率の高さが不安低減効果を持つことは大筋において認められたが,自己管理そのものは,むしろ不安を高める方向に機能する可能性があることを示唆する結果になった。
- 日本行動療法学会の論文
- 1990-09-30
著者
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