渡良瀬遊水地における過去の掘削履歴が絶滅危惧植物の現在の分布に及ぼす影響と影響評価地図
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概要
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湿地再生のための掘削は、水条件の回復や外来植物の除去等の効果をもたらす一方で、既存の植生が表層土壌とともに失われるため、その計画にあたっては、絶滅危惧種等の植生構成種への影響に関する保全生態学的な評価が必要である。本研究では、ヨシとオギの高茎草本群落が優占する渡良瀬遊水地において、湿地再生のための掘削が絶滅危惧種に及ぼす影響評価を行い、計画に資する地図を作成した。11,514コドラート(10m×10m)の植物分布調査データを集計した結果、評価対象種26種のうち、8種は出現頻度が20%以上の高頻度分布種であり、18種は10%未満の低頻度分布種であった。高頻度分布種を対象として、土木工事用土砂採取のために過去48年間に行われた掘削とその場所における絶滅危惧種の現在の出現状況との関係を分析した。一般化線形モデルを用いて、絶滅危惧種の存在量を説明する要因のモデル選択を行ったところ、いずれの種も、上位モデルにおいて、概ね、過去の掘削の有無、標高(1, 2次項)およびヨシ・オギのシュート密度の説明変数が選択され、ベストモデルにおいて、これらの変数の正または負の有意な効果が認められた。過去の掘削は、6種で正に、2種で負に有意な効果を示した。しかし、負の効果をもった2種の現在の出現頻度は、いずれも50%以上であった。統計モデルによる要因分析ができなかった低頻度分布種については、既存の生態学的知見等を活用し、湿地再生候補地選定のための参考地図(掘削回避域・可能域・推奨域の3区分)を作成した。低頻度分布種の分布域は、原則として掘削回避域とした。なお、低頻度分布種のうち、撹乱依存性のある種および移植による影響緩和策の有効性について確実な知見のある種は、掘削可能域に含めることを可とした。低頻度分布種の分布しない区域のうち、現在広範な侵入が確認されている侵略的外来種セイタカアワダチソウが分布している場所は、原則として掘削推奨域とした。
- 2012-11-30
著者
-
角谷 拓
国立環境研究所
-
鷲谷 いづみ
東京大学大学院農学生命科学研究科
-
鷺谷 いづみ
東京大学大学院農学生命科学研究科
-
角谷 拓
環境研
-
石井 潤
東京医科大学微生物学教室
-
石井 潤
東京大学大学院農学生命科学研究科
-
鶯谷 いづみ
東大・農
-
角谷 拓
国立環境研究所生物・生態系環境研究センター
-
小幡 智子
東京大学大学院農学生命科学研究科
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