北海道朱太川水系におけるカワシンジュガイ個体群の現況と局所密度に影響する要因
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
絶滅危惧種カワシンジュガイMargaritifera laevisの生息にとって良好な環境が現在でも保たれていると考えられる北海道朱太川水系において、27地点(324コドラート:0.5×0.5m)においてカワシンジュガイの局所密度と個体サイズ(殻長)、およびその生息に影響する物理化学的要因について調査した。カワシンジュガイは各コドラートにおいて、0〜75個体/0.25m^2の密度で生息していた。個体サイズのレンジは3.9〜127.1mmと大きく、稚貝の割合が34〜100%と比較的高いことから、現在でも順調に更新が行われていると推測された。一般化線形混合モデルによる解析では、カワシンジュガイの局所密度にはDO・砂の割合・流速が95%信頼区間において0を含まず、正の効果を与えていた。砂の割合・水深については2次項の効果も95%信頼区間において0を含まなかった。局所密度は、DOが9.30〜10.2mg/l、砂の割合が10〜50%、水深が0.2〜0.6m、流速が0.05〜0.30s/mのコドラートで高かった。3つのサイズクラス(<20mm,20〜50mm,>50mm)別に同様の解析を行ったが、生息に影響する要因に顕著な違いは認められなかった。また、生息に好適な環境要因の組み合わせは、河川中心部よりは岸辺近くでみられ、同種の河川横断方向の分布には、それに応じた偏在が認められた。以上の結果から、カワシンジュガイが高い環境要求性をもつことが明らかとなった。河岸改修などによる物理的環境の改変は、個体群の存続に大きな影響を与える可能性がある。
- 2011-11-30
著者
-
鷲谷 いづみ
東京大学大学院農学生命科学研究科
-
鷲谷 いづみ
東京大学農学生命科学研究科
-
鷺谷 いづみ
東京大学大学院農学生命科学研究科
-
鶯谷 いづみ
東大・農
-
宮崎 佑介
東京大学大学院農学生命科学研究科
-
松崎 慎一郎
国立環境研究所生物圏環境研究領域
-
宮崎 佑介
東京大学農学生命科学研究科生圏システム学専攻
-
照井 慧
東京大学農学生命学研究科
-
照井 慧
東京大学農学生命科学研究科生圏システム学専攻
関連論文
- 千曲川における侵略的外来植物4種の侵入範囲予測
- トンボの絶滅リスクに及ぼす生態的特性の効果(生物の空間分布・動態と生態的特性との関係:マクロ生態学からの視点)
- 原産地における分布特性が日本の河川域における外来植物の侵略性に与える影響(生物の空間分布・動態と生態的特性との関係:マクロ生態学からの視点)
- 日本における絶滅危惧水生植物アサザの個体群の現状と遺伝的多様性
- 群馬県鳴神山における絶滅危惧植物カッコソウの個体群再生に向けた取り組み
- 特定外来生物に指定すべき外来植物種とその優先度に関する保全生態学的視点からの検討
- 絶滅危惧植物サクラソウ(Primula sieboldii)におけるマイクロサテライトマーカーの開発
- 生物多様性保全モニタリングにおける参加と外来種対策--セイヨウオオマルハナバチの監視活動 (特集 日本の自然--生物多様性・風景・国立公園)
- 野付半島におけるセイヨウオオマルハナバチの定着状況と在来マルハナバチ相(保全情報)
- 里の自然再生--「久保川イーハトーブ世界」の取り組み (特集 生物多様性保全の現場から)
- 霞ヶ浦における土壌シードバンクからのアサザ個体群再生のための順応的な実践
- トンボの危機を市民研究者が評価する (特集 生物多様性の日本)
- 緑化植物がもたらす外来種問題 (特集 緑化とそれをとりまく問題)
- 外来種の定着と侵略性の生態学的要因(水産業と外来生物)
- マルハナバチ一斉調査北海道と栃木県でのセイヨウオオマルハナバチの確認
- 自然再生事業指針
- マルハナバチ一斉調査(第五報)
- 多摩川のカワラノギク保全のための緊急アピール(緊急アピール)
- 科学者倫理の確立に向けて声明表出に際しての会長談話, 声明「科学者の行動規範について」
- マルハナバチ一斉調査(第四報)
- 北海道日高地方で発見されたセイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris L.)の自然巣における高い増殖能力
- 北海道勇払郡鵡川町におけるセイヨウオオマルハナバチBombus terrestris(Linneus)の営巣状況とエゾオオマルハナバチB. hypocrita sapporoensis Cockerellの巣に出入りするセイヨウオオマルハナバチの働き蜂に関する報告
- マルハナバチ一斉調査(第六報)
- 北海道旭川市の河畔林で発見されたセイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris L.)の自然巣および北海道における本種の定着状況について
- 北海道沙流郡門別町および平取町におけるセイヨウオオマルハナバチBombus terrestris L.の7年間のモニタリング
- マイクロサテライト変異と葉緑体DNA変異に基づくサクラソウ園芸品種の起源の推定
- 岩手大学滝沢演習林におけるサクラソウ個体群の現況とその保全に向けて
- 原産地における分布特性が日本の河川域における外来植物の侵略性に与える影響
- 琵琶湖に生育する6種の沈水植物の光・水温特性
- 水田に生息するゲンゴロウ類の現状と保全(水田生態系の危機)
- トンボ池型ビオトープを活用した保全学習
- 生物多様性保全に資する政策の日米比較(I) : 絶滅危惧種・外来種・遺伝子組み換え生物
- 絶滅が危惧されるシャジクモ類のまきだした土壌からの復活
- 総合科学技術会議における生物・生態系研究開発の取組み
- 総合科学技術会議における生物・生態系研究開発の取組み
- 栃木県鬼怒川流域におけるシルビアシジミの保全 (特集 シルビアシジミ,最近の研究成果)
- 外来種がもたらす小笠原の森林生態系の危機
- バイオ燃料 セルロース系エタノールへの期待--地球温暖化対策と生物多様性保全のシナジーに向けて
- イネと水田に新たな価値を見出す (特集 稲との再定義)
- 環境 国連ミレニアム生態系評価報告書を読む(後編)
- 植物の寿命の多様性 (特集=寿命) -- (寿命をめぐる非遺伝的要因)
- 不可逆的に生態系が変化した時代--外来植物の侵入 (特集 検証=昭和30年代--高度経済成長前の自然と暮らし)
- 地球との共生をめざして(4)生物多様性と健全な生態系を取り戻す
- 話題 花粉症と生態系
- 地球との共生をめざして(2)「ミレニアム生態系評価」が明らかにした現状
- アザメの瀬自然再生事業地周辺地域の水辺環境における生物多様性認識と事業への参加意欲に見られる世代間差
- 生物多様性保全に資する政策の日米比較(II) : 生態系分野の環境影響評価・生態系修復・保全教育・市民参加と協働
- カワラノギクの種子生産に与える花粉親の数と自殖の効果 : 個体群復元のための人工授粉法の検討
- 琵琶湖に生育する沈水植物の1997年から2003年まで6年間の変化
- 無土壌岩盤法面で実施した外来牧草による緑化が及ぼす植生遷移への影響
- 侵略的外来種による生態系への影響と対策
- 外来生物法施行が積み残した外来種問題
- 日本における外来種問題の現状と課題 : 特に外来緑化植物シナダレスズメガヤの侵入における問題について
- 学会が取り組んでいること、取り組むべきこと、そして若手研究者の皆様へ : 学会長からのメッセージ(学会員へのお知らせ)
- 平成15年度環境技術開発等推進費における研究開発実施課題について(その3)遺伝子地図と個体ベースモデルに基づく野性植物保全戦略の研究--サクラソウをモデル植物として
- サクラソウ・エコゲノム・プロジェクト--遺伝子の多様性を考慮した野生植物保全戦略の構築に向けて (特集 環境研究の将来) -- (環境技術研究)
- カルタヘナ議定書と生物多様性影響評価 : 保全生態学が果たすべき役割(保全情報)
- 学校ビオトープの保全生態学における活用
- 「生物多様性保全・生態系再生」に向けた新しい水環境研究
- 氾濫原湿地の喪失と再生--水田を湿地として活かす取り組み (自然再生の理念と実践--湿地生態系を事例として)
- 外来種はなぜ問題となるか (特集 外来種による生態系の攪乱と水環境への影響)
- 外来種が脅かす河川の生態系 (水と人間(4)川と環境の相関)
- 『ただの虫』を無視しない農業 : 生物多様性管理, (著)桐谷圭治, 築地書館
- 河川における外来植物対策の最前線
- 生物多様性保全のための河川における侵略的外来植物の管理
- 日本における外来植物の侵略性の評価 (特集:生態系の攪乱)
- 侵略的外来牧草シナダレスズメガヤ分布拡大の予測と実際
- 保全生態学と雑草学の接点 : 自然再生事業における外来雑草対策(特別講演)
- 21世紀「環の国」づくり会議と「自然再生」
- 鬼怒川砂礫質河原における外来牧草シナダレスズメガヤの侵入と河原固有植物の急激な減少 : 緊急対策の必要性
- 都市におけるクライマックスの森林とウエットランドの再生 (テーマ 環境時代の公園緑地(2))
- 鬼怒川砂礫質河原の植生と外来植物の侵入
- 保全生態学と森林の管理(2001年の森を探る : いろいろな働き)
- 渡良瀬遊水地の湿地再生試験地における初期の植生発達
- 茨城県北浦流域における谷津奥部の水田耕作放棄地の植生
- 霞ヶ浦の竣渫土中の散布体バンクの種組成とその空間的不均一性
- 原子力災害が野生生物と生態系にもたらす影響と人々--チェルノブイリからの示唆 (特集 チェルノブイリの教え)
- 霞ヶ浦湖岸「妙岐の鼻湿原」における植物の種多様性指標としてのカモノハシ
- 東京区部西縁3区におけるチョウ相の変化とその生態的要因
- 岩手県一関市のため池群においてコイが水草に与えていた影響
- 市民による礫質河原に侵入した外来植物対策の評価 : 栃木県鬼怒川における事例
- モニタリングデータと生態的特性から探る福井県三方湖流域の純淡水魚類相の変化とその要因
- 北海道南西部の朱太川水系における魚類相とその保全生態学的評価
- 北海道朱太川水系におけるカワシンジュガイ個体群の現況と局所密度に影響する要因
- 蝶モニタリングのためのデータ解析ツール (データ工学)
- ため池のイトトンボの分布に影響する間接要因としてのコイ
- モニタリングデータと生態的特性から探る福井県三方湖流域の純淡水魚類相の変化とその要因
- 蝶モニタリングのためのデータ解析ツール(科学データストレージと応用処理システム,e-science and Big Data,一般)
- ため池のイトトンボの分布に影響する間接要因としてのコイ
- 蝶モニタリングのためのデータ解析ツール
- 博物館標本と聞き取り調査によって朱太川水系の過去の魚類相を再構築する試み
- 福井県三方湖周辺の水路・小河川における在来沈水植物の分布に対する外来生物の影響
- 渡良瀬遊水地における過去の掘削履歴が絶滅危惧植物の現在の分布に及ぼす影響と影響評価地図
- 岩手県一関市内「久保川イーハトーブ」自然再生事業地における水田畦畔の維管束植物相の特徴と規定要因
- 空間スケールと解像度を考慮した里地里山における土地利用のモザイク性指標 : 福井県の市民参加型調査データを用いた検証
- 生物多様性評価に向けた土地利用類型と「さとやま指数」でみた日本の国土
- 朱太川水系氾濫原の小規模な一時的水域の魚類相 : 種多様性の要因と保全・再生への示唆
- 参加型モニタリングプログラムを活用したセイヨウオオマルハナバチ対策 : 継続参加者の役割と運営者からの情報発信の意義
- 博物館標本と聞き取り調査によって朱太川水系の過去の魚類相を再構築する試み