視覚パターンの複雑さの操作が分裂錯覚に与える影響(テーマセッション,人の視聴覚情報処理とPRMUの接点)

概要

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人間は,複数の感覚情報を統合することによって,安定した知覚を効率よく形成している。その際に統合された情報と整合がとれるように知覚が形成されるため,物理的な入力と知覚が異なる場合がしばしば生じる。この場合に,多感覚統合による錯覚が生じると考えられる。分裂錯覚(fission illusion)は,視聴覚統合によって生じる錯覚現象の一つである。この錯覚は非常に短い時間間隔の中で生じる錯覚であるため,視覚刺激の複雑さといった刺激の処理効率の影響を受けやすいと考えられる。そこで,本研究ではGarner and Clement (1963)によって提案された視覚パターンを利用して,分裂錯覚に視覚刺激の複雑さが与える影響を検討した。その結果,複雑な刺激の方が単純な刺激と比べて分裂錯覚が生じにくいことが示された。また,1回目の視覚刺激と2回目の聴覚刺激のSOAを操作することで,刺激の複雑さによる分裂錯覚の生起頻度の違いが見られなくなることも示された。以上の結果より,分裂錯覚が生じるためには1回目の視覚刺激と継時提示される聴覚刺激が統合されることが必要であり,そのため視覚刺激の処理効率の影響を受けやすいことが示された。
2012-03-22