周波数帯域の除去が雑音駆動音声の知覚に与える影響 : 複数話者の分析(音声一般,聴覚・音声・言語とその障害/一般)

概要

論文の詳細を見る
音声を臨界帯域フィルターに通し、各帯域のパワー変化を変量として因子分析を行った研究[Ueda, Nakajima, and Satsukawa (2010). Proc. 26th Ann. Meet. Inter. Soc. Psychophys., 39-44.]によって、音声の周波数帯域は8言語/方言に共通する4帯域に分割されることが明らかにされたが、音声知覚における各帯域の役割はまだ明らかではない。本研究では、男女各1名の音声から合成された4帯域雑音駆動音声を用い、帯域の除去が日本語の単音節知覚に与える影響について調べた。異聴表から刺激の伝達情報量を求め、第1帯域(50-570Hz)の除去は子音の伝達情報量を、第2帯域(570-1850Hz)の除去は母音の伝達情報量を大きく低下させることを明らかにした。このことから、第1帯域と他の帯域との時間的前後関係が、子音知覚の重要な手がかりになっているのではないかと考えた。第2帯域の除去は/i/母音への顕著な異聴を引き起こすことにより、伝達情報量を低下させた。第3帯域(1850-4000Hz)の除去は、いくつかの母音の知覚に対して影響したが、大きな影響ではなかった。また、第4帯域(4000-7000Hz)の除去は、全体的に伝達情報量を低下させた。
2012-03-01