Hepcidin-2はマウスにおける放射線被ばくの尿中バイオマーカーである
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概要
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世界規模での急速な人口増加や科学技術の進歩により,エネルギー問題は今や最も重要な関心事の一つである.その中で原子力発電は二酸化炭素を排出しない事から地球温暖化対策にもつながる,将来有望なエネルギーである.しかしながら,スリーマイル島,チェルノブイリそして東京電力福島第一原子力発電所での事故などに代表される原子力災害のリスクが常につきまとう.このような事故では多数の高線量被ばく者の発生を想定しておく必要があり,迅速な線量推定とその線量に応じた治療が必要である.なぜなら放射線被ばくで引き起こされる急性放射線症候群は被ばく線量によって異なる症状を呈するからであり,その症状に応じた適切な治療計画を行う上でも被ばく線量を推定することは重要である.これまで末梢血リンパ球における染色体異常を指標とする線量評価が最も一般的かつ正確であるが,リンパ球を培養し,染色体を鏡検するという時間と熟練を要する作業が必要であり,一度に多数の被ばくを疑われる人に対し,実施することはほぼ不可能である.そのため,迅速かつ簡便に被ばく線量を推定することは結果的に多くの人を救うこととなると考えられる. 本研究では,非侵襲的に採集が可能な尿検体における放射線被ばくのバイオマーカー探索を高感度質量分析計を用いて行い,そこから見出されたhepcidin-2の線量依存性やその分泌メカニズムについて検討を行った.
- 2012-09-25
著者
-
河合 秀彦
京都大学放射線生物研究センター放射線システム生物学
-
西村 まゆみ
独立行政法人放射線医学総合研究所発達期被ばく影響研究グループ
-
鈴木 文男
広島大学原爆放射線医科学研究所 放射線災害医療研究センター国際緊急被ばく医療研究分野
-
島田 義也
放射線医学総合研究所発達期被ばく健康影響グループ
-
河合 秀彦
名古屋大学環境医学研究所ゲノム動態制御分野
-
飯塚 大輔
広島大学原爆放射線医科学研究所放射線障害機構研究部門放射線細胞応答研究分野
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