一般演題 29 電離放射線誘発細胞死シグナルにおける分断化LyGDIの機能解析
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概要
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電離放射線照射された胸腺は早期にアポトーシス・シグナルが細胞内で活性化し,間期死を起こす。この致死経路のシグナル活性化は放射線照射後速やかに起こる。こういった早期アポトーシスの過程には,放射線照射後数時間以内で起こるミトコンドリアからのチトクロームcの細胞質への流出が重要であり,この流出が開始要因となってアポトーシスのシグナル(ポスト・ミトコンドリア経路)が細胞内で活性化すると考えられている。活性化される因子の中で,3型カスペースは主要な役割を担っており,色々な蛋白がこの活性化によって切断される。これらの基質の中で私たちは低分子量G蛋白質Rhoファミリーの制御因子であり血球系で高発現しているLyGDI(RhoGDIβ, RhoGDI2, D4GDIなどとも呼ばれる)に注目した。LyGDIはマウス胸腺腫由来細胞を用いた実験から,放射線照射後約4.5時間で切断の開始が見られ,12時間以内に特異的な切断が完了し,それ以降は非特異的な蛋白分解が起こる。この3型カスペース依存的なLyGDIの切断により,マウスでは1-18までのN末アミノ酸が欠失し,ヒトの場合は1-19までのN末アミノ酸が欠失する。本研究では3型カスペースにより切断されたLyGDIのアポトーシス・シグナルにおける役割を調べるために,切断後に細胞内に残留するN末失欠型LyGDIを細胞に強制発現し,細胞に対する影響を調べた。その結果,N末失欠型LyGDIは細胞に対して致死効果を持つことがわかった。
- 長崎大学の論文
著者
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河合 秀彦
京都大学放射線生物研究センター放射線システム生物学
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太田 隆英
金沢医科大学総合医学研究所・分子腫瘍学研究部門
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太田 隆英
金沢医科大学総合医学研究所分子腫瘍学研究部門
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河合 秀彦
広島大学原爆放射線医科学研究所放射線細胞応答研究分野
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河合 秀彦
広島大学原爆放射線医科学研究所 ゲノム応答研究分野
-
前田 雅代
金沢医科大学医学部生命科学科目
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周 新文
蘇州大学放射線公衆衛生学部
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河合 秀彦
名古屋大学環境医学研究所ゲノム動態制御分野
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