咳嗽と血痰を主訴に救急搬送された外国人結核の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
患者はフィリピン国籍の54歳、男性。3か月前に来日した。山形県内に滞在し、2か月前より咳嗽・血痰を訴えていた。血痰量が増加したため、救急隊を要請し、当院に来院した。血液・生化学検査では、WBC 9550 /μl,CRP 2.21 mg/dlと軽度の炎症反応と、随時血糖584 mg/dlと高血糖を認めた。胸部X線写真において右中肺野に空洞性病変、胸部CTにて右肺上葉、右肺中葉に空洞を伴う浸潤影を認めた。さらに喀痰Ziehl-Neelsen染色にて塗抹陽性(Gaffky 3号相当)を認め、結核の診断で入院となった。本症例では、画像検査で異常陰影を認めるまで医療従事者はサージカルマスクを着用し、標準予防策のみで対応した。このため、初期対応に従事したスタッフは濃厚接触者となった。最近では外国人結核患者の増加を認めており、フィリピン人は日本国内の外国人結核感染者数の2位である。また、糖尿病は結核のリスクファクターの1つである。本症例は結核高蔓延国の出身、咳嗽・喀血の主訴という点から結核をまず念頭において診療すべきであった。さらに、外国人入国者の増加の背景より今後も外国人結核症例を経験する機会があると考えられ、本症例を教訓に医療従事者への感染予防策、公衆衛生的な対策を検討する必要があると思われる。
- 2012-08-15
著者
-
林田 昌子
山形大学 医学部救急医学講座
-
伊関 憲
山形大学医学部救急医学講座
-
林田 昌子
山形大学医学部救急医学講座
-
清野 慶子
山形大学医学部救急医学講座
-
篠崎 克洋
山形大学医学部救急医学講座
-
阿部 修一
山形大学医学部内科学第1講座
-
杉山 恵一郎
山形大学医学部附属病院卒後研修センター
-
阿部 尚弘
山形大学医学部附属病院卒後研修センター
-
伊関 憲
山形大学医学部器官機能統御学講座急性期生体統御学分野
関連論文
- 急性呼吸不全の後遺症としての慢性呼吸不全 (特集 呼吸管理プラクティカルガイド) -- (人工呼吸の終了)
- Fallot 四徴症根治術後に発症した横紋筋融解症の一例
- アナフィラキシーショックの治療にβ遮断薬が影響を及ぼし心肺停止に陥った1症例
- 剖検により判明した心サルコイドーシスの1例
- 5. 急性腎不全の予後は改善したか? : 山形大学ICUにおける過去15年間の成績(日本アフェレシス学会第12回東北アフェレシス研究会抄録)
- 5.急性腎不全の予後は改善したか? : 山形大学ICUにおける過去15年興の成績(日本アフェレシス学会第12回東北アフェレシス研究会抄録)
- 大孔径PMMA膜の持続血液濾過法におけるサイトカイン除去の評価 : 日本アフェレシス学会第11回東北アフェレシス研究会
- Pulse CO-Oximetryの使用経験
- First Defenderを用いたアセトアミノフェンの検出
- 骨髄路 (特集 「救急蘇生ガイドライン」課題と展望) -- (医療従事者の救命処置)
- 中毒初級講座(第3回)消化管除染
- 肺の自然免疫における肺胞マクロファージの役割について
- 低容量のドパミン投与により治療したクレゾール中毒の一例
- 急性冠症候群と考える院外心停止の1剖検例
- ツキヨタケ中毒の4症例
- 肺胞マクロファージの分化誘導
- 髄膜癌腫症による Garcin 症候群を呈した肺腺癌の1例
- P-407 当科における小児外傷の治療状況 : 肝損傷を中心に(小児救急2,ポスターセッション,第48回日本小児外科学会学術集会)
- 10.腫瘍内部にアスペルギローマを認めた肺多形癌の1例(第37回 日本呼吸器内視鏡学会東北支部会)
- 塩化カルシウムが著効したジルチアゼムなどの大量服薬の2症例
- 東日本大震災における山形大学医学部附属病院 Disaster medical assistant team(DMAT)活動報告
- 剖検により全身性炎症の合併が判明した心臓突然死の一例
- CTにて診断された肝膿瘍の2症例
- 東日本大震災直後での山形大学医学部附属病院救急部の診療状況
- 超速効型及び持効溶解型インスリンアナログの大量注射による低血糖にグルカゴンが奏効した一例
- 咳嗽と血痰を主訴に救急搬送された外国人結核の1例
- 自然災害と急性一酸化炭素中毒 (特集 中毒診療のトピックス)
- 巨大脾腫および汎血球減少を合併し脾臓摘出術を施行したサルコイドーシスの1例
- P2-35-1 妊娠末期に胎児機能不全を認め帝王切開後に右片側腎・腎動脈瘤破裂を判明した一例(Group91 合併症妊娠(症例)6,一般演題,第64回日本産科婦人科学会学術講演会)