消費者金融市場における公的金融
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概要
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近年、不祥事から消費者金融産業において何らかのコントロール(規制)が求められるようになってきているが、このような規制をおこなうには2つの方法が考えられる。一つは、現在検討されている上限金利や営業地域の規制などの直接規制である。もう一つは、公的な金融機関を通じて市場の金利などに影響を与える間接規制である。しかし、間接規制については、銀行業においてさえ現実に日本政策投資銀行や国民金融公庫などの公的金融機関が存在し、間接的なコントロールがおこなわれていると考えられるにもかかわらず、これまであまり研究されなかった。そこで本稿では、消費者金融サービス産業に間接規制を導入した場合の経済効果について分析をおこなう。まず、個人向けの融資をおこなう金融機関が、独占的な資金供給者から必要な資金を借り入れるような状況を考える。そして上流の資金供給者が利潤の最大化を目指す私企業であった場合と、社会的余剰を最大にすることを目的とする公的機関であった場合の2つのケースについて分析をおこなった。その際に、下流の個人向けの貸出市場については、少数の金融機関がクールノー競争をおこなう寡占市場を想定した。このモデルを使い、上流の資金供給者が公的機関である場合と私企業である場合を比較すると以下のような結果が得られた。すなわち、短期均衡では、金融機関数が同じであれば、資金供給者が私企業よりも公的機関の場合の方が均衡金利は低く、総貸出額も多くなる。また、長期均衡における下流の金融機関数は、独占的な公的機関が資金を供給する方が、私企業の場合よりも多くなる。さらに、資金供給者が公的機関の場合には、長期均衡における金融機関数は、社会的余剰を最大にする次善の均衡におけるそれを上回り、いわゆる過剰参入定理が成立する。次に、長期均衡における両者の経済厚生を比較してみると、公的機関の方が私企業の場合よりも社会的余剰は大きくなる。その理由は以下の通りである。資金供給者が公的機関の場合には、その利潤は負になり、私企業の場合には正になる。しかし、総貸出額は前者の方が後者よりも大きく、その結果、消費者余剰は大きくなる。そのため、上流の資金供給者が私企業から公的機関に代われば、この消費者余剰の増加分が上流における企業の利潤の減少分を上回るため、全体としての経済厚生は改善されることになる。
- パーソナルファイナンス学会の論文
- 2007-09-30
著者
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