補完的技術革新下での損害賠償額と研究開発インセンティブ(<特集>日本経済と産業組織)
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概要
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近年,知的財産権の保護は世界的にきわめて重要な政策となってきている.また,現代では一つの財の生産に,非常に多くの技術の使用が必要であるという「技術の補完性」が存在する場合が多い.加えて,こうした財に関するイノベーションの遂行には,しばしば既存の技術の利用も必要とされる(累積性).本稿では,同質財市場で競争する2企業が,それぞれ互いに完全補完的な2技術A,Bの特許権を一つずつ保有するとき,技術A,Bと累積性をもつ新技術Cをめぐって展開される開発競争を分析する.両企業とも技術Cの開発には他企業が特許権を持つ技術の利用が不可欠である一方で,無断利用すると特許権の侵害により損害賠償の責を負う.このとき,損害賠償額の増加は,技術開発競争の均衡での研究開発インセンティブを低下させることを示し,事前的なクロスライセンス契約の有用性の根拠を示した.また競争均衡での研究開発インセンティブに対する,各企業の新技術開発の結果実現する復占利潤,瞬間割引率に関する比較静学を行った.
- 東京大学の論文
- 2004-03-18
著者
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