金融機関の過剰参入定理金融機関の費用関数が異なる場合
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概要
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近年、金融業において銀行が消費者金融サービスに進出するなど、さまざまな金融機関の間での競争が激しくなってきている。一般に企業は利潤を目的として行動しているので、ある産業における既存の企業が正の利潤を得ていれば新規企業が参入し、逆に既存の企業が損失をこうむっていれば、その企業は退出する。その結果、長期的には参入・退出が止まり、安定的な産業構造(長期均衡または自由参入均衡)が実現する。寡占市場では、長期均衡で実現される企業数が経済厚生の観点から見て効率的か否かについて、これまで多くの研究がおこなわれてきた。寡占市場における長期均衡の企業数が次善的な意味で社会的余剰を最大にする企業数よりも多い、という「週剰参入定理」を最初に証明したのが、Von Weizsacker(1980)である。その後、「遇剰参入定理」は一つの流れとしてMankiw,N.G.,and M.D.Whinston(1986)やSuzumura.K.,and K.Kiyono(1987)によって長期均衡における同質的な企業からなる産業について示され、今ひとつの流れとしてLahiri and Ono(1989)により費用構造が異なる異質な企業間における短期均衡について示された。本稿の目的は、今までの研究結果を金融業に適用し、「過剰参入定理」が成立することを示すことである。ここで分析対象にしている金融機関は、調達した資金を貸し出すことによって収益をあげることが主な業務であるような銀行や消費者金融サービス会社などである。これまでに銀行業における過剰参入の可能性を分析した研究には鈴村(1992)があるが、そこでは同質的な銀行が分析対象であった。本稿では、上で述べた「過剰参入定理」の研究における2つの流れ(同質的な企業による長期均衡における遇剰参入定理と異質な企業による短期均衡における過剰参入定理)を統合し、費用構造が異なる金融機関によって構成される産業の長期均衡について分析をおこなう。この長期均衡における金融機関数を、社会的余剰を最大にする次善的に効率的な金融機関数と比較することにより、費用構造の異質性が存在しても、長期均衡の金融機関数は次善的に効率的である金融機関数を超えるという、「過剰参入定理」を証明する。我々の結果はMankiw and Whinston(1986),Suzumura and Kiyono(1987)とLahiri and Ono(1989)の結果を統合した完全な一般化になっている。
- パーソナルファイナンス学会の論文
- 2006-08-31
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