補完的技術革新下での知的財産権の行使,ライセンス契約と経済厚生に関する理論分析(<特集>経済法・経済規制と産業組織)
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概要
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近年,知的財産権の保護は各国で重要な政策である.他方,今日では一財の生産に相当数の技術利用を要する「技術の補完性」が存在する場合が多い.本稿では,同質財市場で競争する2企業が,互いに完全補完的な2技術の特許権を一つずつ保有するとき,互いの特許侵害によるスピルオーバーと,侵害に対する提訴,訴訟費用,損害賠償などの知的財産権の行使を表すパラメータを明示的にモデルに組み込み,2企業間に結ばれる可能性のあるライセンス契約の態様,またライセンス契約の結果達成される市場均衡での経済厚生が,知的財産権の行使から受ける影響を簡単なモデルで分析した.その結果,知的財産権行使を記述するパラメータに関するある条件下では,クロスライセンス契約が結ばれ,かつ経済厚生上独占より望ましい複占均衡が生ずるが,原告の勝訴確率が2分の1より高く,かつ相対的に原告の訴訟費用のほうが被告の訴訟費用より高いとき,片務的なライセンス契約が両企業により結ばれて経済厚生上複占より劣る独占均衡が成立することを示した.
- 東京大学の論文
- 2005-03-10
著者
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