糖タンパク質の膵臓プロテアーゼ分解について
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概要
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脱脂ヒト初乳より,硫安分画,ついで透析,凍結乾燥によって糖タンパク質を含む粉末の乳汁タンパク質標品を調製し,その標品を基質として用いた.市販品でへキソースを含まないカゼイン,ヒト卵巣のう腫液より精製した糖含量の高い血液型活性糖タンパク質,および上記の乳汁タンパク質標品のそれぞれをエンテロキナーゼ処理を施したヒト膵液のプロテアーゼでインキュベートした.これら基質のうち,カゼインは膵臓由来プロテアーゼの作用を容易に受け,反応開始後わずか2時間でカゼインタンパク質の95%が80%エタノールに可溶化した.一方,血液型活性糖タンパク質は膵臓プロテアーゼの作用に対して著しく抵抗し,反応開始後24時間でポリペプチドコアの39%,その糖鎖(へキソース)部分の91%が80%エタノールに不溶状態のままであった.さらに,乳汁タンパク質標品の膵臓プロテアーゼによる分解率はタンパク質(糖鎖結合ポリペプチドコアの部分を含む)で56%,糖タンパク質の糖鎖(へキソース)部分では低率の36%であった.その結果から,糖タンパク質の糖側鎖はポリペプチドコアの酵素的分解に対して防御的役割を果たしていると考えられる.本研究の実施にあたり,北海道立釧路水産試験場利用部原料化学科長辻浩司先生には試料のアミノ酸分析,同水産試験場利用部利用科長錦織孝史先生にはSDS-ポリアクリルアミドゲルの染色後の写真撮影をお願いしました.両先生に心から感謝いたします.
著者
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