コンゴレッド培地による口腔バイオフィルム形成細菌簡便単離の可能性

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バイオフィルム形成細菌は薬剤,宿主免疫応答,外部環境の変化に抵抗性を示し,慢性難治性の細菌感染症を引き起こすことが明らかにされている.細菌のバイオフィルム形成性を簡便かつ迅速に判定する方法として,いくつかの色素添加培地が用いられているが,今回,コンゴレッド培地(Congo red agar : CRA)を用いて,ヒト全唾液中からバイオフィルム形成細菌のスクリーニングを試みた.インフォームドコンセントの得られた健康成人被験者5名より全唾液を採取し,希釈してCRAに塗抹,37℃で48時間好気培養後,得られたコロニーを実体顕微鏡下で観察した結果,辺縁形態と色調から,辺縁ラフで黒色(RB),辺縁ラフで透明もしくは赤色(RL),辺縁スムースで黒色(SB),辺縁スムースで透明もしくは赤色(SL)の4種類に分類可能であった.それぞれのカテゴリーのコロニーから任意に選んだ菌株をtrypticase soy blood agarに継代し,37℃で24時間好気培養後,1)菌体表層構造の走査電顕観察,2)16S rRNA遺伝子の塩基配列による菌種の同定を行った.走査電顕観察の結果,コロニーの色調に関係なく,辺縁ラフ型コロニーから得た菌株(32株)のすべてに,バイオフィルム形成細菌に特徴的な菌体周囲の網目状構造を認めた.同定の結果,Neisseria属が20株,Streptoccus属が10株(内訳はS. salivarius 5株,S. mitis 2株,S. anginosus/constellatus 51株,S. parasanguinis 1株,S. australis 1株),Rothia dentocariosa(2株)であった.辺縁スムース型コロニーでは,SB型の24株すべてに網目状構造を認めず,SL型では13株中9株に網目状構造を認めなかった.好気培養条件下でCRA上に辺縁ラフ型コロニーを形成する唾液細菌のすべてに,バイオフィルム形成細菌に特徴的な菌体周囲の網目状構造が確認された.一方,辺縁スムース型コロニーを形成する株の約90%が網目状構造をもたなかった.以上の結果から,CRAが好気培養条件下で口腔バイオフィルム形成細菌の簡便スクリーニング法として応用可能であることが示唆された.
特定非営利活動法人日本歯科保存学会の論文
2008-10-31

コンゴレッド培地による口腔バイオフィルム形成細菌簡便単離の可能性

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