審美性歯面コート材の特性と歯質への影響
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概要
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審美性歯面コート材(以下,コート材)は,歯の漂白が困難な症例に対して,歯冠部に塗布することにより審美的改善を図ることができる.テトラサイクリン歯の色は,紫外線の影響を受け,加齢に伴い暗褐色に変化することが報告されている.したがって,テトラサイクリン歯にコート材を塗布することにより,歯質に照射される自然光からの紫外線量を抑えることができれば,加齢に伴う暗褐色変化を抑制することが期待できる.そこで今回,2種のコート材(ホワイトコート^<TM>シェードOB0(以下,WOB),オペーク(以下,WOP),ビューティコート シェードBW3(以下,BBW),シェードWO(以下,BOP)),コンポジットレジン(ユニフィル^[○!R]ローフロープラス シェードAO3(以下,UAO)),グラスアイオノマーセメント(フジアイオノマー^[○!R]タイプII シェードYB(以下,FYB))およびエナメル質を使用し,厚さ0.1,0.3,0.5,1.0mmのディスク試料を作製し,試料の光の透過率を測定した.また,対照としてヒト歯エナメル質の0.3,0.5,1.0mmのディスク試料を作製し,試料の光の透過率を測定した.また,アパタイト系歯科用セメントにテトラサイクリン溶液を混入させてテトラサイクリン変色モデル(以下,変色モデル)を作製し,厚さ0.3mmの各試料を介して変色モデルに紫外線を7日間照射した場合の照射前後の色差(ΔE^*ab)を測定した.結果は一元配置分散分析とTukeyの検定(p<0.05)によって統計処理を行った.さらに,もしテトラサイクリン歯の加齢による変色の進行を抑制する目的でコート材を使用するのであれば,長期的な使用が必要となる.コート材は本来,暫間的な審美性材料として開発されている材料のため,辺縁封鎖性が問題になる.そこで,コート材(WOB,BBW)とエナメル質の界面の状態を24時間(24h)後,5℃と55℃,各30秒間ずつのサーマルサイクル500回(以下,TC500)後,1,000回(以下,TC1000)後の色素漏洩試験により辺緑封鎖性を評価した.結果は,Mann-WhitneyのU検定(p<0.05)によって統計処理を行った.また,暫間的な材料のコート材を歯面からいったん除去し,再び新たに塗布することを繰り返し行った場合のエナメル質表面への影響を検討するため,コート材塗布24h後に除去した試料(24h除去),塗布TC500後に除去した試料(TC500除去),塗布TC500後に除去を3回繰り返した試料(TC500×3除去)をSEM観察した.その結果,以下の結論を得た.1.厚さ0.3mmの試料で,WOB,WOP,BOPは400nm以上の波長域まで,光の透過率は0.5%未満を示し,紫外線の吸収効果が示唆された.2.厚さ1.0mmの試料で,BBW,UAO,FYBも400nm以上の波長域まで,光の透過率は0.5%未満を示し,紫外線の吸収効果が示唆された.ただし,臨床で使用する厚さとしては問題があると考えられた.3.変色モデルの色差は,WOB,WOP,BOPでは,エナメル質と比較して有意に小さく,テトラサイクリン歯の変色の進行を抑制することが示唆された.4.コート材とエナメル質界面の色素漏洩試験結果では,24h後では辺緑封鎖性は良好であったが,TC500,TC1000後では色素漏洩が認められ,コート材を塗布したままで長期間経過すると,辺縁封鎖性が低下すると考えられた.5.コート材除去後エナメル質表面のSEM観察では,塗布24h除去,TC500除去,TC500×3除去とも大部分がコート材とエナメル質界面で剥がれており,コート材の塗布-除去を繰り返し行った場合のエナメル質表面への影響は少ないものと考えられた.
- 2008-02-29
著者
-
福井 優樹
大阪歯科大学大学院歯学研究科歯科保存学専攻
-
白石 充
大阪歯科大学歯科保存学講座
-
山本 一世
大阪歯科大学歯科保存学講座
-
山本 一世
大阪歯大・大学院・歯科保存
-
山本 一世
大歯大・歯・保存
-
山本 一世
大阪歯大・歯科保存
-
山本 一世
大歯大・保存
-
白石 充
大歯大・保存
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福井 優樹
大阪歯大・大学院・歯科保存
-
福井 優樹
大阪歯科大学
-
福井 優樹
大阪歯科大学歯科保存学講座
-
白石 充
大阪歯科大学大学院歯学研究科
-
山本 一世
大阪歯科大学 歯科保存学講座
-
山本 一世
大阪歯科大学
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