複層林下木ヒノキの当年生葉における比葉面積,光合成能力,およびクロロフィルa・b比
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概要
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複層林下木の健全な育成を図るための基礎として,複層林下木の光環境と光合成生産に関連する種々の生態生理的特性を検討した。アカマツを上木とする複層林内の様々な光環境下で生育する,複層林の重要な下木樹種であるヒノキの当年生葉を研究対象とし,比葉面積(SLA),光合成能力,光-光合成特性,およびクロロフィル含量などを測定・比較した。光合成能力の測定には気相酸素電極法を用いた。その結果,着葉位置相対照度の低下にともなう反応として以下のことが明らかになった。(1)着葉位置相対照度40%〜50%以下で顕著にSLAが増加し,形態的な陰葉化が顕著に進む。(2)同40〜50%以下で,葉面積あたりの光合成能力が顕著に低下する。(3)光-光合成曲線の形状は,着葉位置相対照度の低下にともない初期勾配はほとんど変わらないものの,光補償点光量が低下し光量不足の環境化に有利に適応している。(4)葉面積あたりの全クロロフィル含量は着葉位置相対照度が低下してもほとんど変動しないものの,クロロフィルa・b比は顕著に低下し,林内の赤色光不足に適応している。さらに,着葉位置相対照度の低下にともなう光合成能力の低下の原因は,光合成系の活性(単位クロロフィルあたりの光合成能力)の低下のためであることを明らかにした。これらの結果から,ヒノキ当年生葉は,着葉位置相対照度40〜50%付近以下で光合成生産に関する形態的,生理的性質を大きく変化させることが明らかになった。
- 森林立地学会の論文
- 1995-03-15
著者
-
田中 格
山梨県森林総合研究所富士古田試験園
-
松本 陽介
森林総合研究所海外研究領域
-
上村 章
森林総合研究所
-
田中 格
山梨県森林総合研究所
-
重永 英年
森林総合研究所森林環境部
-
上村 章
森林総合研究所北海道支所
-
松本 陽介
森林総合研究所・海外研究領域
-
松本 陽介
森林総合研究所九州支所
-
重永 英年
森林総合研究所九州支所
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