神奈川県丹沢山地における絶滅危惧種ヤシャイノデ(Polystichum neolobatum Nakai)の現状と保全対策
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概要
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神奈川県丹沢山地に分布する環境省絶滅危惧IA類のシダ植物であるヤシャイノデの保全に向けて、生育地における個体数と葉のサイズ、生育環境を調べた。過去に分布記録のある4箇所のうち2箇所でヤシャイノデの生育を確認し、個体数は2004年で計21個体、2006年で計18個体、2007年で計15個体と年々減少した。これらのうち胞子をつけた成熟個体はいずれの年も2個体のみであった。2006年におけるニホンジカの採食可能な範囲(採食可能域)とそうでないところ(不可能域)の個体数は採食可能域で11個体、不可能域で7個体であり、採食可能域で多かった。個体あたりの平均葉数は両者で差異がなかったものの、葉サイズは採食可能域で小さかった。また、葉の先端が欠け、シカに採食されたと思われる個体も採食可能域で多かった。周辺の林床植被率も採食可能域では不可能域よりも低く、スズタケも少なかった。以上のことから、丹沢山地のヤシャイノデは、総個体数および成熟個体数も少なく、シカの採食により成熟サイズに達することが阻害され、生育環境も悪化している可能性が示唆され、絶滅の危険性が高いと考えられた。ヤシャイノデの保全に向けて、ヤシャイノデを含めて周辺の林床植生をシカの採食から防護するための植生保護柵を設置することと、緊急避難的に増殖技術を確立することが急務である。
- 2008-11-30
著者
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