重度精神遅滞児の食事行動の形成
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概要
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本研究は、適切な食事行動の学習に失敗しており、手づかみの行動が著しい重度精神遅滞児に行動修正技法を適用し、適切なスプーン使用による食事摂取行動を目標行動として形成するために試みられた。訓練は基底水準期、目標行動の発生促進期(第1訓練期)、目標行動の定着期(第2、第3訓練期)からなっている。目標行動の発生促進期では、スプーン使用の一連の行動を5つのステップに分けたmanual guidanceの手続が用いられ、定着期では、手づかみの行動(第3訓練期では食器や食べものをほかす行動も加えられた)に対して言語的叱責と15秒間の食事のタイムアウトを与える手続が用いられた。また、全訓練期間を通して、2度連続して生起したスプーン使用に対して言語的容認と身体的接触が与えられた。基底水準期を含んだ47セッションの訓練状況はビデオテープに収録され分析された。その分析の結果、およそつぎのようなことがあきらかになった。(1)Manual guidanceの手続は目標行動を発生させるものの、その行動の定着化には不十分であると思われる。(2)目標行動の定着期で用いられた手続は手づかみの行動を減少させ、適切なスプーン使用行動を対象児の食事行動のレパートリーの中に定着させるようである。(3)ある種の不適切な行動の一時的増大というnegative side effectともいうべき現象がみられたが、これもタイムアウトの対象にされると、すぐに以前の生起率にまで減少した。(4)自己刺激的行動が目立ち、対人関係をほとんどもてなかった対象児が、本訓練を通して対トレイナーとの接触をもちはじめ、さらにそれを深めることを求めるようになった。このようなひとつの訓練を契機として、生活の他の領域をも含んだ発達の促進へと展開していくのも可能と考えられる。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1974-06-01
著者
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