重度精神薄弱児の食事行動の訓練
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は、食事中にさまざまな不適切な行動を示す重度精神薄弱児にオペラント技法を適用し、そうした不適切な行動を修正し、適切な食事行動を形成するために試みられた。訓練に際しては、不適切な行動に対して負の強化を、適切な行動に正の強化を与えるという手続をとった。修正すべき不適切な行動としてまずとりあげられたのは、a)食器をひっくりかえす、b)スプーンを使わずに食べる行動であり、27セッションからは、これらに、c)食器をたたきつける行動が、80セッションからは、d)食べ物をこぼす行動が追加された。食事中にこのような不適切な行動が起こるたびに、言語的叱責と同時にお盆をとりあげ15秒間の食事からのタイムアウトを行なう。また、スプーンを口まで2回連続して運ぶごとに、言語的容認と同時に身体的接触を与えるというものである。施設での観察、訓練前の観察(第1基底水準期)、訓練(第1、第2訓練期)、訓練の効果をみるための観察(第2基底水準期)、訓練(第3〜6訓練期)というスケジュールをたて、その間の食事行動をVTRによって記録した。全体で99セッションであったが、訓練のためには84セッションを当て、残りの15セッションは訓練なしの観察に当てられた。こうした記録の分析の結果、およそ次のようなことがらが明らかになった。(1)ここでとりあげられた4つの不適切な行動は、強化手続が与えられると、まず急激に減少し、その後着実な減少をつづけ、ほとんど消失する。(2)第2基底水準期では、各々の不適切な行動は、前後の訓練期間にくらべ、有意な増加を示している。(3)訓練期間中に食器をスプーンで小きざみにたたくという行動が一時的に高まったが、適切な食事行動が増大するにつれ消失している。(4)食事行動のみではなく、その他の社会的行動においても望ましい傾向が増大し、この訓練がパーソナリティの安定化にも作用したと思われる。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1973-03-01
著者
-
冨安 芳和
愛知県コロニー発達障害研究所
-
小塩 允護
発達障害研究所
-
冨安 芳和
発達障害研究所
-
小宮 三彌
発達障害研究所
-
小宮 三彌
愛知県コロニー発達障害研究所:(現)熊本大学
-
小塩 允護
愛知県コロニー発達障害研究所
関連論文
- 臨床・障害2
- 重度精神遅滞児の自己刺激行動 : 1.施設の生活事態差が及ぼす影響度による検討
- 臨床・障害(735〜739)(部門別研究発表題目・討論の概要)
- 臨床・障害4(826〜833)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 臨床・障害6(930〜938)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 臨床・障害6(852〜863)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 臨床・障害1(801〜808)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 精神遅滞者の適応行動の構造 : III.技能的側面と行動上の問題との関係
- 精神遅滞者の適応行動の構造 : II.発達的変化の分析
- 臨床・障害(724〜730)(部門別研究発表題目・討論の概要)
- 食事中にあらわれる重度精神遅滞児の反社会的行動の修正
- 730 オペラント技法に基づく重度精神遅滞児の食事行動訓練過程の解析
- 精神遅滞者の適応行動の構造 : 1因子分析の試み
- 重度精神遅滞児の食事行動の形成
- 臨床・治療・障害(801〜809)(部門別研究発表題目・討論の概要)
- 精神薄弱者の適応行動尺度の構成
- 重度精神薄弱児の食事行動の訓練
- 反応パターンの解釈によるパーソナリティ診断の試み (5) : CDPA 標準化の資料
- 反応パターンの解釈によるパーソナリティー診断の試み (4)
- 反応パターンの解釈によるパーソナリティー診断の試み (3)
- 反応パターンの解釈によるパーソナリティー検査の試み (2)
- 精神薄弱児学級卒業生の職場での適応 : Y・S両教師の指導のありかたとの関連において
- 805 重度精神薄弱児の食事行動の訓練 : 集団場面を通して(800 臨床・治療・障害)
- 911 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究XV(臨床・障害2 集団ケア,研究発表)
- 910 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究XIV(臨床・障害2 集団ケア,研究発表)
- 828 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究XIII(臨床・障害4,研究発表)
- 827 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究XII(臨床・障害4,研究発表)
- 938 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究XI(精神遅滞,臨床・障害)
- 937 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究X(精神遅滞,臨床・障害)
- 862 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究IX(臨床・障害6,臨床・障害)
- 861 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究VIII(臨床・障害6,臨床・障害)
- 803 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究.VII(臨床・障害1,研究発表)
- 802 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究.VI(臨床・障害1,研究発表)
- 858 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究V(臨床・障害6,口頭発表)
- 857 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究IV(臨床・障害6,口頭発表)
- 860 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究 : III.結果の分析(その2)(臨床・障害)
- 859 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究 : III.結果の分析(その1)(臨床・障害)
- 804 精神薄弱児の適応行動の発達(800 臨床・治療・障害)
- 824 精神薄弱者の適応行動尺度の構成(第2報) : IIデータ分析とその考察(800 臨床・治療・障害)
- 823 精神薄弱者の適応行動尺度の構成(第2報) : I日本版作成の試み(800 臨床・治療・障害)
- 737 重度精神遅滞児の自己刺激的行動 : 施設における事態との関連(臨床・障害7-6,700 臨床・障害)
- 736 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究 : II. 特徴的な2施設に於ける測定を通しての方法の検討(臨床・障害7-6,700 臨床・障害)
- 735 精神遅滞者施設におけるケアのパターンに関する研究 : I. 問題の所在と測定方法(臨床・障害7-6,700 臨床・障害)
- 臨床・障害5(828〜834)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 829 重度精神遅滞盲児の排泄訓練(臨床・障害5,臨床・障害)
- 障害研究雑感(部門別論評)
- 314 要求水準の一般性に関する研究(1)(7.人格(2),日本教育心理学会第5回総会部門別研究発表要旨・討論の概要)
- ダウン症児と生理的精神薄弱児の図形模写能力についての研究
- 脳性マヒ児における形と色の知覚についての研究