駒止湿原の集水域における耕作地造成のための森林伐採が湿原内のヨシ群落高におよぼす影響
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概要
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湿原の湿原植生の保全方法の確立を目的とし、福島県の駒止湿原における、湿原集水域での耕作地造成のための森林伐採が湿原内のョシ群落高におよぼす影響を調べた。湿原集水域のブナ林の土壌は、地表より埴質壌土のA層とその下層に埴土のB層からなる適潤性褐色森林土(偏乾亜型)B_D(d)であった。一方、湿原集水域の放棄耕作地は埴土の耕耘層とその下層に埴土のB層が認められ、これらはブナ林のB層に土色や土色が類似していた。放棄耕作地に接する湿原周縁部のヨシ群落では、泥炭層の上に放棄耕作地と類似した粘土質の土壌が堆積していた。放棄耕作地を通り抜けて湿原へ流れ込む流水路沿いのヨシの群落高は、森林を通り抜けて直接湿原へ流れ込む流水路沿いよりも高かった。表層土壌のEC、灰分率およびpHについては、放棄耕作地を抜けて湿原へ流れ込む流水路沿いの方が高かった。駒止湿原において放棄耕作地を通り抜けて湿原に流れ込む流水路沿いのヨシの群落高の方が森林を通り抜けて直接湿原へ流れ込む流水路沿いよりも高かったのは、放棄耕作地から無機物に富んだ鉱物質の土壌の湿原へ流入した結果であることが判り、湿原の集水域となっている森林が湿原への土砂の流入を防ぐなど、湿原植生にとって重要な役割を果たしていることが示唆された。
- 2008-05-30
著者
-
伊藤 祥子
宇都宮大学農学部育林・森林生態学研究室
-
谷本 丈夫
宇都宮大学農学部育林・森林生態学研究室
-
伊藤 祥子
宇都宮大学農学部森林生態・育林学研究室:(現)国立環境研究所
-
広木 幹也
国立環境研究所
-
広木 幹也
国立環境研究所生物圏環境研究領域
-
小林 隆人
山梨県環境科学研究所動物生態学研究室
-
谷本 丈夫
宇都宮大学農学部森林生態・育林学研究室
-
谷本 丈夫
宇都宮大学
-
小林 隆人
山梨県環境科学研究所動物生態学研究室:日本学術振興会:(現)山梨県環境科学研究所動物生態学研究室
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