駒止湿原周辺の耕作跡地における植物群落構造と土壌との関係
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概要
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福島県駒止湿原周辺の森林を再生させる方策を検討するため,湿原周辺の耕作跡地における群落構造を明らかにし,代表的な群落型の土壌断面を掘って,その土壌の特徴を把握し,さらに群落型と土壌の硬度・透水性との関係を調べた。耕作跡地を除く湿原周辺はブナの二次林で,耕作跡地には林縁および沢や湿原に接する場所にクマイザサやクマイチゴなどの低木型,湿原に隣接し湧水の認められる場所にヨシ型,平坦地に牧草型,斜面にススキ型が分布し,ブナ林を含めて計5型に区分できた。さらにススキ型は斜面上部の生育不良(草丈<2.0m)と斜面下部の生育良好(草丈≧2.0m)の2亜型に区分できた。特にススキ生育不良亜型は農道に接していた。ブナ林の土壌型は適潤性褐色森林土(偏乾亜型)B_D(d)であった。一方,耕作跡地の土壌表面はブナ林よりも30〜40cm低くなっており,土壌断面はにぶい黄褐色を呈し,粒状構造の埴土の耕耘層と黄褐色でカベ状構造の埴土のB層から成っていた。しかし,ススキ生育良好亜型や牧草型ではススキ不良亜型よりも耕耘層が厚く,根系が多く認められ,腐植の浸透も深かった。土壌硬度は牧草型とススキ生育良好亜型がススキ生育不良亜型よりも軟らかい土壌の割合が多く,ブナ林についで軟らかかった。また土壌透水性も表層から深さ40cmでは,牧草型とススキ生育良好亜型がススキ生育不良亜型よりも優れていた。以上のことから,駒止湿原周辺の耕作跡地で群落型に違いが認められた要因の1つは,表層土壌が失われた程度の違いによると推察した。表層土壌が失われた程度が異なることに付随して,腐植の浸透した深さ,土壌硬度,土壌透水性の違いに表れたと考えられた。このように各群落の立地特性を把握したうえで,耕作跡地に森林を再生させるために,ブナの植林が可能な立地環境を指標する植物群落型を明らかにし,再生の過程と方策の一案を示した。
- 森林立地学会の論文
- 2005-12-25
著者
-
星 理恵
宇都宮大学農学部育林・森林生態学研究室
-
伊藤 祥子
宇都宮大学農学部育林・森林生態学研究室
-
藤井 哲次郎
(株)ジオグリーンテック
-
谷本 丈夫
宇都宮大学農学部育林・森林生態学研究室
-
伊藤 祥子
宇都宮大学農学部森林生態・育林学研究室:(現)国立環境研究所
-
谷本 丈夫
宇都宮大学農学部森林生態・育林学研究室
-
谷本 丈夫
宇都宮大学
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