北海道における夏季乳房炎 : 野外症例の臨床,細菌および病理学的所見

概要

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1977〜1978年の間に,北海道各地で夏季乳房炎に罹患した乳用育成牛の40症例(罹患分房:54例)を検索した。本症の発生は,夏季に,放牧中の13〜18ヵ月齢の未種付牛の前分房に最も多かった。延べ147分房の臨床変化を観察し,経過を3期に分けた。乳房の発赤,熱感,腫脹,疼痛と膿汁搾出のみられる時期を前期,前期症状とともに乳房の皮膚の瘻管形成と硬結のみられる時期を中期,前期,中期症状の一部とともに膿汁搾出停止と漿液搾出がみられる時期を後期とした。その結果,全身症状や下腹部と膝関節の炎性浮腫は前期で最も著しかった。26症例の罹患分房より採取した膿汁よりActinomyces pyogenesとPeptococcus indolicusを高い共存率で分離した。病理学的に,中期では,乳管洞粘膜と乳腺部の化膿性融解が認められ,中期と後期では乳管洞粘膜と乳腺部に線維性の増生があり,乳管は圧縮され,乳腺は間質炎によって萎縮していた。以上の結果から,北海道における本症は臨床,細菌および病理学的に北ヨーロッパの夏季乳房炎と同一の疾病であると考えられた。
帯広畜産大学の論文
1991-06-30