明治大正期府県別出生力の分析
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概要
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日本の出生力転換過程を地域的視点から明らかにするため,戦前期の府県別普通出生率を推計した。推計方法は,届遅れの出生数を15年後まで考慮して,それを当年届の出生数に加算するというものである。その結果次の3点が観察された。1908年まではほとんどの府県で出生率が上昇していた。その後近畿から出生率の低下が始まり,東北が低下しだすのは1925年以降である。出生率の水準は近畿を中心とする西日本で低く,中部,東北となるにつれて次第に高くなる。観察期間を通じてこの傾向は一貫している。このような地域差が生じた要因を探るため,出生率の上昇局面の1903年と一部の地域で低下傾向が始まっていた1920年の時点でいくつかの要因が検討された。1903年ではデータ的にも統計的にも若干問題があるが,結婚年齢,乳児死亡率,農村の人口収容力が出生率の地域差を規定していた。産業化の影響はまだみられなかった。1920年ではこれらの要因に加えて,産業化が出生率に対してはっきり負の効果を及ぼすようになった。近畿では,産業化による職業分布効果が相対的に強く作用しまた農村の人口収容力が小さかったため,出生率の低下傾向が先駆けて始まったと考えられる。
- 帯広畜産大学の論文
- 1987-06-30
著者
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