日本産クロオオブユ属の1新種キタクロオオブユの記載
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概要
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著者は1973〜1976年6,7月に北海道日高山脈と大雪山国立公園の両山地でTwinnia属のブユの雌成虫,蛹,幼虫を採集し,道内各地の山地でも幼虫を採集した。特に上士幌町糠平では1974〜1976年6,7月に森林内の細流で,多数の幼虫,蛹を採集しこれらを飼育して成虫を羽化させて,同属の既知種と比較した結果新種であると認めたので,ここにTwinnia canniboraとして記載する。本種は本州産のT.japonensisに類似しているが,雌雄の生殖器,雌の口器,雄の後脚,蛹の呼吸糸などの形態の差異から別種と見なされる。T. magadensisにもかなり類似しているが,雌の生殖器,第8腹節のanal Plate,maxillaおよびsensory vesicle,後脚のtarsiの形態の差異から別種と見なされる。またT. sedicumfistulata,T. novaとは雌雄の生殖器,雌の口器,雄の後脚,蛹の呼吸糸,幼虫のhypostomiumの歯の形態の差によって明瞭に区別できる。さらにT.hydroides,T. tibblesi,T. biclavataとは雌のmandible,maxillaに歯が発達していないこと,雌雄の交尾器の差によって容易に区別できる。本種の幼虫の頭部には口刷毛がなく,細流の中で浮游植物片の上面に群集していることもあるが離脱しやすく,多くは石の下面,側面,木材片の側面(飼育した場合はガラスケースの内壁)などで,シャクガ幼虫のごとくはいまわり,頭部を左右にふりながら前進するので,接触した幼虫間にしばしば友喰いが起こることが観察された。雄成虫は渓流の上にはり出ている植物の葉上に静止していることが多く,渓流の上にはられたクモの巣にかかっていることも発生盛期(7月上,中旬)によく見られる。雌成虫は森林内の空間部で朝夕群飛しているが,人体への吸血性は著しくなく,本来の吸血源は知られていない。本種は亜高山帯から高山帯に産し年1化である。本種に対してキタクロオオブユという和名を提唱したが(Genus Twinniaクロオオブユ属に属するため),むしろ小型のブユで成虫の体長の個体変異が著しく,蠕の呼吸糸の分岐状態,幼虫の体長,色彩にも変異が著しい。
- 1977-11-25
著者
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