北海道産ハルブユ属 Genus Stegopterna (Diptera, Simuliidae) 1 新種の記載

概要

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著者は1973年7月29日∿8月2日北海道大雪山五色ケ原とクッチャンベツ沢で, 多数のStegopterna属の雌を採集したが, 雄, 蛹, 幼虫は得られなかった。1974∿1976年6,7月に上士幌町糠平とその周辺の森林内の細流で多数の幼虫, 蛹を採集し, これらを飼育して成虫を羽化させた結果, 新種であると認めたのでここにStegopterna nukabiranaとして記載する。本種は本州産のStegopterna sp.に類似しているが, 雌の生殖器, 口器の形態から別種と見なされる。またS. duodecimata, S. asema, S. richteri, S. mutataとは雌雄の生殖器, 雌の口器, 雄の後脚第1趺節, 蛹の呼吸糸, 幼虫のhypostomiumの歯の形態の差により区別できる。さらにS. emergensは雌のmaxillaに歯がなく, S. brachiataは蛹の呼吸糸が22本であり, S. sibirica decafilisは呼吸糸が10本であり, S. tschukotensisは雄の後脚第1趺節が膨隆し, distimereのterminal spineが1本であるので区別できる。本種は北海道の大雪山のほかに日高山脈の亜高山帯から高山部にも産し, 年1化と考えられる。その人体吸血性はすでに明らかにされているが, それはSimulium japonicumアシマダラブユのようにはげしくはない。本種に対してダイセツハルブュという和名を提唱した。
日本衛生動物学会の論文
1977-09-15