北海道網走地域の台地土壌に関する生成学的研究 : 第2報 腐植組成および粘土鉱物組成について
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概要
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網走地域の台地土壌について,生成学的な観点からの土壌腐植組成および粘土鉱物組成の研究については,きわめて少ない現状である。したがって,土壌生成過程の指標としての腐植,粘土鉱物組成の解析,土壌理化学性とそれらの間の関連性などについて総合的な考察はほとんどなされていない。この論文では,前報にひきつづき,生成学的研究の一環として,本地域に広汎に分布する3種の土壌断面内における腐植組成および粘土鉱物組成について検討した。調査結果は次のように要約することが出来る。1.3土壌とも表層(A_p,A_1層)において腐植酸がフルポ酸の生成をうわまっている(Ch/Cf,1.0〜1.8)。この傾向は,腐植質火山灰土に属する中園土壌ほど著しい。2.3土壌の腐植組成を詳細に吟味した結果,土壌中の腐植と無機塩類の結合形態は,各土壌ともチェルノゼーム的ではなく,火山灰土やポドソル土と同じ形態をとっていると考えられる。3.腐植酸の光学特性(ΔlogK,RF,腐植酸の型およびE_4/E_6比)からは,明らかに中園土壌と越歳,平和土壌との間に差異が認められる。前者は,既往の資料を参照すると,よりチェルノゼーム的であり,後者は,ポドソル土的である。このことは腐植酸の型からも推定される。すなわち,より腐植化度の高い腐植酸は中園土壌において認められ,それは火山灰土壌の表層に認められるA型腐植酸に相当し,越歳,平和土壌の表層のP型腐植酸と明らかに性質を異にするものである。換言すれば,中園土壌の腐植酸は,より縮合度が高く,光学密度大(ΔlogKが低い)で,疎水性の芳香族核が親水性の脂肪族側鎖に優位なことを示している。4.3土壌の表層における粘土鉱物組成を検討した結果,粘土鉱物の主成分がメタハロイサイト,14A鉱物,モンモリロナイトなどの結晶性粘土鉱物で占められ,非晶質物(アロフェン)の存在は,中園土壌の表層を除き明瞭でない。5.腐植質火山灰土に属する中園土壌は,副成分としてアロフェンを含有するが,粘土の過半はより結晶化の進んだメタハロイサイト,ハロイサイトが主成分である。中園土壌では2:1型粘土鉱物も全層にわたって認められ,これらは表層で層間Alによるクロライト化の著しい非膨脹型14A鉱物と,和水度の低いイライトで特徴づけられる。6.褐色森林土に属する平和土壌は,上記の中園土壌より,さらに結晶化の進んだ2:1型粘土鉱物と,メタハロイサイトを主成分としており,アロフェン様の非晶質物はほとんど含有されていない。2:1型粘土鉱物は,大部分クロライト化した非膨脹型14A鉱物(一部に膨脹型14A鉱物も存在する)で,表層ほどAl固定の度合いが強い。全層に含有されるイライトの和水度も表層ほど高くなっている。他方,越歳土壌の粘土鉱物組成は,前2種土壌と異なり,モンモリロナイト鉱物を主成分としている。これらの生成過程については,恐らく下層母材からの継承によるものが大部分であろうと推察した。また,表層と下層でモンモリロナイト鉱物の内容が異なるものと推定され,下層ほどバイデライト様モンモリロナイトの占める割合が高くなっているようである。
- 帯広畜産大学の論文
- 1970-11-25
著者
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近藤 錬三
帯広畜産大学環境総合科学講座
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近藤 錬三
Laboratory Of Environmental Soil Science Obihiro University Of Agriculture And Veterinary Medicine
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近藤 錬三
帯広畜産大学
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