樹木葉のケイ酸体に関する研究(第2報) : 双子葉被子植物樹木葉の植物ケイ酸体について
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概要
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本邦に自生する46科160種の広葉樹葉部の組織細胞のヶイ化状態と,それらのケイ酸体の形態的特徴を検討し,以下の結果を得た。1)供試樹木葉中,最もケイ化の著しい組織細胞は,維管束細胞,走皮細胞,表皮毛および表皮毛基部であった。また,ケイ化が最も強く,かつ明瞭な形態を示すケイ酸体は,モクレン科,ブナ科,クスノ科,クワ科およびニル科の樹木葉中に見いだされた。2)供試樹木葉のケイ酸体は,形態的に次の8グループに大別された。第Iグループ;表皮細胞に由来する「はめ絵パズル」状形態のヶイ酸体で,モクレン科とブナ科のブナ属およびシイノキ属の葉部にとくに多く観察される。大きさは,ほぼ20〜70μmである。第IIグループ;表皮細胞に由来する5角形あるいは6角形の板状形態のケイ酸体で,大部分の樹木葉で普通に観察される。とくに,ブナ科のコナラ属の葉部で多く観察される。第IIIグループ;篩部細胞に由来する「Y字」あるいは「くの字」状形態のケイ酸体で,大部分の樹木葉に多く観察される。第IVグループ;ケイ酸体の表面が網日状の棟を有する紡錘状および塊状形態のケイ酸体で,維管束細胞の周辺部にみられ,ツツジ科,モクレン科のモクレン属,ブナ科のシイノキ属およびスダジイ属の葉部に多く観察される。第Vグループ;ケイ酸体の表面が螺旋紋を有する紡錘状およびブレード状形態のケイ酸体で,大部分の樹木葉に観察される。このケイ酸体は維管束細胞の導管がケイ化したものである。スイカズラおよびクスノキ科の葉部でとくに多く観察される。第VIグループ;表皮毛に由来するくちばし状形態のケイ酸体で,ニレ科,クワ科およびスイカズラ科のタニウツギの葉部に多く観察される。第VIIグループ;ケイ酸体の表面が凹凸あるいは無数のいぼ状突起物を有する球状のケイ酸体で,クスノキ科,クワ科,クルミ科およびウコギ科の葉部に観察される。第VIIIグループ;第1〜第VIIグループのいずれにも属さないケイ酸体で,気孔由来のケイ酸体を除くと,極めて稀れに葉部に観察される。3)供試樹木葉のケイ酸体は,イネ科,カヤツリグサ科,ヤシ科および裸子植物のそれと明らかな形態的相違を示していた。さらに,同一科・属および種の間で樹木葉のケイ酸体の形態的特徴が相互に比較検討されるならば,より明確な樹木起源ケイ酸体の体系化が期待される。
- 帯広畜産大学の論文
- 1981-11-15
著者
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近藤 錬三
Laboratory Of Environmental Soil Science Obihiro University Of Agriculture And Veterinary Medicine
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ピアスン 友子
4A Panorama Tce
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