マツ科樹木の葉部に由来する植物ケイ酸体の特徴
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概要
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樹木起源の植物ケイ酸体(以下,ケイ酸と呼称)の中でも情報の少ない針葉樹起源のケイ酸体に着目し,その量と形態的特徴を明らかにするために,富良野市山部の東京大学農学部附属演習林に植林されているマツ科53種の樹木葉を供試試料とし,それらのケイ酸体含量,形態および粒径について比較検討した。得られた結果を要約すると,以下のとおりである。1.ケイ酸体含量は,0.03〜0.70%と幅広い範囲にあったが,大多数の針葉樹は1.10%以下であった。カラマツ属およびトウヒ属で0.50%以上と多く,反面,マツ属,モミ属トガサワラ属およびツガ属で0.1%前後と少ない傾向にあった。2.ケイ酸体は主に葉部の表皮,移入仮導管,内皮および気孔を給源細胞組織としていた。マツ属,トウヒ属およびモミ属は移入仮導管ケイサ酸体と内皮ケイ酸体が過半以上を占めていた。しかし,カラマツ属は,表皮ケイ酸体と細胞間隙ケイ酸体が主に観察され,他のケイ酸体はほとんど検出されなかった。3.各属に特有なケイ酸体が観察された。マツ属は葉肉ケイ酸体,トウヒ属は波状辺板状ケイ酸体,モミ属は内皮ケイ酸体,ツガ属は移入仮導管ケイ酸体,カラマツ属は表皮ケイ酸体と細胞間隙ケイ酸体によって特徴づけられる。4.一部の針葉樹木種には,きわめて特徴のあるケイ酸体が観察された。ポンデローサマツは副表皮ケイ酸体,ダグラスファーは星状厚壁異形細胞ケイ酸体,カラマツは平滑辺板状表皮ケイ酸体,グイマツは細胞間隙ケイ酸体によってそれぞれ特徴づけられ,他の針葉樹樹木種と明確に区別された。5.各針葉樹木のケイ酸体サイズは,全体的に近似していたが,マツ属,トウヒ属およびモミ属由来のケイ酸体は大型のものが多く,反面,ツガ属のケイ酸体は小型であった。6.針葉樹木起源ケイ酸体は,今のところ一部の樹木種を除き,属レベルでしか識別できない。しかし,形態的特徴とサイズの組み合わせ,ならびに移入仮導管ケイ酸体の有縁膜孔サイズを詳細に検討することで,一部,種レベルで識別可能である。
- 2003-12-31
著者
-
筒木 潔
帯広畜産大学
-
大澤 聰子
帯広畜産大学畜産科学化環境土壌学研究室
-
芝野 伸策
東京大学農学部生命科学研究科北海道演習樹木林
-
近藤 錬三
帯広畜産大学環境総合科学講座
-
筒木 潔
帯広畜産大
-
近藤 錬三
帯広畜産大学畜産環境科学科土地資源利用学講座
-
芝野 伸策
東大 大学院農学生命科学研究科 演習林北海道演習林
-
Shibano Shinsaku
University Forest In Hokkaido Graduate School Of Agricultural And Life Sciences The University Of To
-
Shibano Shinsaku
University Forest In Hokkaido Graduate School Of Agricultural And Life Sciences The University Of To
-
谷 昌幸
帯広畜産大学
-
近藤 錬三
帯広畜産大学
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