黒酵母培養液ソフィβ-グルカン経口投与によるイヌ回虫症のマウスモデルにおける肺の病理組織学的研究
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概要
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T.canis感染2系統マウスの肺組織に共通して認められた病変は、肺胞内および気管支内への顕著な出血である。水のみ摂取させたコントロールマウスでは、組織傷害が強く10目経過しても修復されず肺水腫に陥っている個体もあった。ソフィβ-グルカン摂取マウスはコントロール群に比べ、気管支内出血はほとんどなくまた肺胞内出血も少なく、傷害を受けない正常肺胞が残存していた。感染後の変化として、コントロール群は血管周囲の浮腫が顕著で、これは血管からの血漿成分の滲出の結果と思われる。しかし、ソフィβ-グルカン摂取マウスは2系統とも血管浮腫はなく、早期から炎症細胞の滲出現象が認められた。コントロール群も血漿成分に混在し炎症細胞の滲出が見られるが、ソフィβ-グルカン摂取マウス2系統に比べ細胞数は少ない。炎症細胞は、初期にはまず好中球、好酸球が滲出し、時間経過に伴いリンパ球、マクロファージと変わっていく。この経過はソフィβ-グルカン摂取マウス2系統ともコントロール群より時期が早い。また、炎症巣の形成も早く、組織傷害修復がより早期に行われている。マクロファージについても、明確な違いが認められた。すなわち、ソフィβ-グルカン摂取マウス2系統ともコントロール群よりマクロファージが活性化され、数が増加するとともに、大型化多核化したラングハンス型巨細胞が出現し始める時期が早い。細胞質内にベルリン青染色陽性のヘモジデリシを有しているマクロファージ、多核巨細胞の集簇巣があり、活発に出血巣の赤血球を貪食し出血巣と組織の修復を行っている。また、BALB/cでは、リンパ球の出現が顕著で、さらに7日、10日経過すると気管支粘膜下あるいは、胸膜下に多数の形質細胞の集団が認められ、細胞性免疫と液性免疫機構の働きも活性化するものと考えられた。この形質細胞の集簇をなすほどの出現は、コントロール群のみならず、ソフィβ-グルカン摂取C57BL/6系の肺組織でも認められなかった。本実験により、ソフィβ-グルカン摂取マウスは、T.canis感染による組織傷害がコントロール群より少なく、さらに炎症細胞や免疫細胞が活性化され、より早く傷害の修復がなされることが明らかになった。
- 高知学園短期大学の論文
- 2007-02-15
著者
-
福永 佐枝
高知大・医・環境保健
-
長瀧 充
高知大・医・環境保健
-
Wickramasinghe Susiji
高知大・医・環境保健
-
吾妻 健
高知大・医・環境保健
-
吾妻 健
医学部看護学科基礎看護学講座
-
吾妻 美子
高知学園短期大学衛生技術科
-
Rajapakse R.
ペラデニア大学獣医学部
-
渡部 嘉哉
株式会社ソフィ研究開発室
-
Rajapakse R.P.V.J.
ペラデニア大学獣医学部寄生虫学教室
-
福永 佐枝
高知学園短期大学専攻科応用生命科学専攻
-
WICKRAMASINGHE Susiji
高知大学医学部環境保健学教室
-
YATAWANI Lalani
高知大学医学部環境保健学教室
-
長瀧 充
高知大学医学部環境保健学教室
-
吾妻 健
高知大学医学部環境保健学教室
-
吾妻 美子
高知学園短期大学医療衛生学科医療検査専攻
-
Rajapakse R.p.v.j.
ペラデニア大学獣医学部
-
吾妻 健
高知医科大学 寄生虫
-
吾妻 健
高知大学医学部
-
渡部 嘉哉
高知大学医学部環境保健学教室
-
吾妻 健
Department Of Environmental Health Science Kochi Medical School Kochi University
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