反復性のつらい体験によって形成される「心の傷スキーマ」の実証的研究 : 閾下感情プライミングパラダイムを用いて
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概要
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従来の「トラウマ」研究の中で,非常にストレスフルな出来事を体験しPTSDのような重篤な症状を呈するような場合については,症状を引き起こす異常なスキーマ(情報処理の枠組み)の存在が実証されてきている。しかし,臨床的なケアの対象として取り上げられないような「比較的軽度」の出来事でも,特にそれが反復的に繰り返されるつらい出来事である場合,人の心にスキーマを形成し,ネガティブな影響を及ぼしている可能性がある。本研究の目的は,過去に比較的軽度かつ反復性のつらい出来事を体験した人が,その体験にもとづく「心の傷スキーマ」を形成しているかどうかについて,閾下感情プライミングを用いて実験的に検討することであった。実験協力者は,過去にいじめられた経験をもつ者(以下,いじめ有群;N=23)ともたない者(いじめ無群;N=48)であった。実験協力者は,プライム刺激としてポジティブ語,ブランク,ニュートラル語,ネガティブ語,いじめ関連語を閾下呈示され,後続する中性のターゲット刺激に対する好意度評定を行った。その結果,いじめ有群においてのみ,ニュートラル語よりもいじめ関連語が閾下呈示されたときのほうが,直後の中性刺激(ターゲット)を好ましくないと評定した。結果は次のように解釈できる : 「いじめられ体験」に関わる刺激によって「心の傷スキーマ」は活性化され,そのことによって,中性な情報がネガティブに歪められた。このことより,いじめ有群が過去の「いじめられ体験」にもとづく「心の傷スキーマ」をもっている可能性が示唆された。ただし,想定される基本的な閾下感情プライミングの効果が現れにくかったため,注意深く考察を行った。
- 2007-09-20
著者
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