土壌病原菌の土壌生態学的研究 : 第10報 C/N比を異にする土壌中における白絹病菌の生態について
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概要
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本研究においては, C/N比を異にする土壌中における白絹病菌Corticium rolfsii(Sacc.)Curziの菌糸の生育, 菌核形成, 土壌呼吸量および他の土壌微生物とのpopulationを研究した.その結果を要約すれば次の通りである.1)C/N比の変化に伴う本菌の生育度合は, 対照区が最も早く, 各C/N比区には大差は認めなれなかった.しかし菌糸の密度では対照区が最も薄く, 窒素添加区が大となった.2)C/N比が本菌の菌核形成に及ぼす影響を見ると, 菌核形成は接種後14日では対照区が他のC/N比区に比べ多いが, 16日以降となると窒素を含む土壌の方が菌核形成は多くなる.3)本菌の呼吸量についてみると, 接種後8日には, control区が最低となり窒素125ppm区が最大となった.全処理区とも8日をすぎると徐々に減少する.4)植生を異にする根圏土壌中における本菌の菌糸の生育は稲, インゲン両区に差は認められないが, 炭素源(2%蔗糖)を添加した稲根圏土壌においては菌糸の生育が悪く, 又菌核形成も悪かった.5)土壌における呼吸量は本菌の発育が非常に悪く, 実際には他の土壌微生物の呼吸量が出たものと思われる.接種後16時間で呼吸量は最大となり1000ppm, 500ppm, 250ppm, 125ppm, 炭素源2%, control区の順となった.6)植生を異にする場合の両区間の呼吸量はcontrol区と大差はなかった.7)呼吸量と菌のpopulationの関係は細菌の場合はN.500ppmが呼吸量最大でcontrol区が最少であった.populationの場合は各C/N比区とも接種後1日が最大で呼吸量の場合と大体同じようなcurveとなった.8)Fungiの場合は1000ppm区が最大となるが, 他のC/N比区, control区との間には大差は認められなかった.Fungiのpopulationのpeakは接種後4〜6日に存在する.9)植生を異にする土壌における菌のpopulationは大差なく, 植生の相違が菌のpopulationに影響を与えているとは思われない.10)本菌に対する拮抗菌の数は時間の経過に伴っては大差なく, 全体を通じていえることは抑制菌として放線菌が34.47%, 細菌が19.08%, 拮抗菌として放線菌が3.5%, 細菌が0.85%得られた.
- 鹿児島大学の論文
- 1966-12-26
著者
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