ブドウの脱粒防止法への知見
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概要
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ブドウの脱粒防止についてその実用的手段への基礎的資料を得るため,マスカット・ベーリー・Aを用いて栽培並びに流通条件と収穫後でのF・R・Fとの関連をみた。栽培面からは房づくりに供した花穂部位並びに開花時での花穂へのGA処理,流通面からは収穫時期の早晩並びに流通での温度及び湿度環境のそれぞれの影響をF・R・F低下あるいはF・R・F構成要素の強化の観点から検討した。(1)房づくりに供した花穂部位の影響については花穂基部由来の果房と花穂先端部由来の果房を比較した。その結果,収穫時では両者にF・R・Fの差異はなかったが,収穫後4日目では花穂基部由来の果房でF・R・Fが低下したにもかかわらず,花穂先端部由来の果房ではF・R・Fは低下せず,果梗水分含量も高かった。また,収穫後4日目における果穂軸各部の水分含量も花穂先端部由来の果房では果梗が最も高く,ついで二次穂軸,穂軸となり,花穂基部果房と全く逆の傾向を示した。(2)開花時での花穂へのGA処理果房は無処理果房に比べ収穫時以降いずれの時期でもF・R・Fが高く,収穫後4日目でもF・R・Fは317gであった。しかし,GA処理果房でも収穫時以降において果梗水分含量が無処理果房と同様に低下し,その含量は無処理果房より低くなった。(3)収穫時期の早晩による収穫後でのF・R・Fの影響をみたが,収穫時でのF・R・Fには収穫時期の影響は少なく,また,収穫後でのF・R・F低下についても収穫時期が極端に遅れない限りその影響は小さかった。(4)収穫後においての温度処理として0℃並びに10℃,湿度処理としては無孔のビニール袋に密封した高湿区並びに有孔のビニール袋に密封した低湿区を設け,それぞれ組合せ4処理区とした。その結果,各区とも収穫後9日目でもF・R・Fが270g以上であったが,収穫後9日目以降では処理間に差異を生じF・R・F低下の抑制には0℃高湿区が最も有効であった。果梗水分含量についても低湿区に比べ高湿区がいずれの温度でも高かった。以上の結果から,花穂先端部を房づくりに供することあるいは収穫後において果房を低温高湿の環境に置くことは果梗水分含量を保持することによってF・R・Ff低下を抑制し,開花時での花穂へのGA処理はF・R・Fの構成要素を強化することをそれぞれ示唆するものであろう。
- 1989-03-30
著者
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