造園樹木の樹形形成に関する形態学的研究 : ユリノキの剪定木について

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ユリノキ(Liriodendron tulipifera L.)の4年生段階で加えた剪定を第1回として,その後毎年1回計4回の冬期剪定を加え,その間の成長を測定,解析した.剪定後の樹高成長は,1984年,85,86年の3回の剪定後でほぼ同じであった.その樹高成長量は2mに及び,7年生までの無剪定木の年間最大伸長量に匹敵するものである.根元径成長は剪定によって緩慢なものとなる.以上の傾向は,4本の剪定木でほぼ共通したものであったが,剪定枝の総乾重については,第1回剪定後に乾重が大きく増加するのは4個体とも同じであるが,第2回剪定以降の推移では個体差が大きかった.剪定木1の各枝の伸長量を剪定前後で比較すると,3回の剪定のいずれにおいても,長い枝を剪定すると長い枝が伸び,短い枝からは剪定後も短い枝しか伸びないことがわかった.また,各枝の伸長率は剪定回数を重ねるにつれて減少した.さらに,枝数も剪定を重ねるにつれて減少した.剪定の繰返しによって減少した枝は短い枝であり,従って剪定を重ねるにつれて長い枝の割合が相対的に高まる形となる.剪定木1の枝ごとの葉材比を第1回及び第3回の冬期剪定後,新たに伸びた枝が伸長を停止した時点で求めた結果,それぞれの年の葉材比は枝ごとに差異がなくほぼ一定であり,第1回と第3回剪定後の葉材比はそれぞれ0.89,0.58であった.無剪定木の場合,若い枝ほど葉材比が高い傾向があるから,第1回剪定後に伸長した枝の方が第3回剪定後に伸長した枝より若い状態にあるものと言えよう.第1回剪定後に伸長した枝の長さとその枝の葉面積合計の関係を無剪定木と比較すると,剪定木の長い枝(ほぼ50cm以上)の葉面積合計は無剪定木のそれに比べてより高く,逆に短い枝(ほぼ50cm以下)では剪定木の葉面積合計が無剪定木のそれに比べて著しく低い値を示す.この短い,劣勢な枝が剪定を繰返すうちに出てこなくなるものと考えられる.剪定木と無剪定木における葉面積合計のこのような違いは,枝につく葉数が剪定木と無剪定木で違うことによるのではなく,葉1枚当りの平均葉面積がそれぞれで異なっているためである.すなわち,無剪定木の平均葉面積は枝の長短にかかわらずほぼ一定なのに対して,剪定木の長い枝につく葉は無剪定木より大きく,短い枝につく葉は無剪定木より著しく小さい.剪定木の展葉開始は無剪定木に比べて2週間遅く,伸長を停止する時期は無剪定木と同じである.従って,剪定木の伸長期間は無剪定木に比べて2週間短い.無剪定木では6月中旬から7月上旬にかけて多くの枝で伸長の中だるみがみられたが,剪定木ではその中だるみのみられる枝が少なく,しかもその期間が6月中旬から下旬で短いものである.従って,剪定木では伸長期間を通して伸び続ける枝が多くあり,無剪定木に比べて成長の旺盛な枝が多いと言えよう.また,このようによく伸びる枝が高い位置の枝に多いことから剪定木でも無剪定木と同じく頂芽優勢が働いていると言えよう.しかし,剪定木では下部の枝でも大きく伸びる枝があることや,伸長の推移に無剪定木ではみられなかった傾向を示す枝もあり,剪定による伸長メカニズムの乱れも否定できない.
千葉大学の論文
1988-03-18

造園樹木の樹形形成に関する形態学的研究 : ユリノキの剪定木について

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