造園樹木の樹形形成に関する形態学的研究 : ユリノキの幼令木について
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概要
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ユリノキ(Liriodendron tulipifera L.)の2年生苗を植栽後4年間の伸長生長を解析した.ある年に伸びた幹についた主枝の伸長は最長枝がその下部に位置し,上部に行くにつれて短くなる三角形の形であり,その底辺である最長枝と新たに伸びた幹の長さの比は6〜7: 10である.2年枝の最大伸長量は1年枝とほぼ同じであり,2年枝の伸長率(ある年の伸長量/その前年の伸長量)は枝の高さの高いものほど高い傾向がみられる.3年枝以降の伸長量は徐々に減少する.また,それと枝の高さとの関係は下部ほど伸長量が小さい傾向はあるものの,1,2年枝でみられたような顕著な傾向はみられなかった.主枝の伸長方位は,2/5葉序に従って144°の開度で着生することから,結果的に五角形を描く形で枝が分布する.また,年ごとの伸長量は方位的にゆがみがあるが,そのゆがみは年によって変わるため数年を経ると各方位に均等に伸びる形となる.主枝の上向角度は下部ほど大きく上部ほど小さくなる傾向があるが,その角度と伸長量との関係はみられなかった.側枝の全長は主枝長と指数関数的な関係にあり,主枝の長さがほぼ50cmに達すると側枝が分枝し,100cmを越えると側枝の全長が主枝長を上まわるようになる.ある年に伸びた主枝とそこについた側枝の伸びとの関係は,幹と主枝との間でみられた関係,すなわち前述の三角形とほぼ同じであった.しかし,枝の2年目の伸長は枝ごとに差が著しく,主枝の2年枝でみられた傾向とは異なっていた.これには,主枝の角度と側枝の着生位置が係わり,角度が小さく斜め上方に伸びた主枝ではその下側(背側),斜下,横に着いた側枝がよく伸び,主枝が水平枝の場合には上側(腹側)についた側枝もよく伸びる傾向がみられた.主枝長の増加とともにそこにつく葉の葉面積合計は指数関数的に増大する.これは,主枝長に係わらず平均葉面積がほぼ一定なことから,葉数の増加によるもので,それは前述したように主枝長の増加にともなう側枝長の増加によるものである.平均葉面積は1年枝で大きく,2,3年枝の順に小さくなる傾向があった.また,平均葉面積と当年枝の伸長量との間には2,3年枝において比例関係にある傾向がみられた.主枝の伸長の季節変化をみると,伸長量の大きい枝では4月中旬から約1ケ月間の初期伸長量が大きく,しかもその後伸長速度の高い時期が5月中旬〜6月中旬と7月中旬〜8月中旬の2回みられ,伸長期間は4ケ月に及ぶ.また,幹頂や一部の特に伸長量の大きい枝では2回の伸長速度の高い時期の間にみられる中だるみがほとんどなく,4ケ月間ほぼ直線的に伸長する.これに対して,伸長量の小さい主枝では伸長速度の高い時期が前期の1回のみで,6月末の中だるみの段階で伸長が停止してしまう.従って,伸長期間は2ケ月半ほどで,伸長量の大きい枝に比べて1ケ月半も短い.側枝の伸長の季節変化も,5月中旬から6月中旬にかけて伸長速度の高い時期をもったsigmoid curveを描く点で主枝のそれと類似しているが,主枝と質的に異なる点は,主枝の初期伸長期に側枝の伸長量が0であるということである.
- 千葉大学の論文
- 1987-03-30
著者
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