過去13年間に経験した基底細胞癌の統計学的・組織学的検討

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北里大学病院形成外科開設から13年の間に30例の基底細胞癌を経験したので報告する。30例の内訳は,男性19例,女性11例とおよそ2倍の頻度で男性に多く,年齢別頻度では36歳から86歳までに分布し,平均では64歳であった。発生部位では,顔面に発生したものが26例79%と最も多く,その他背部,肩甲部,腰部,鼠径部,手掌,耳介が1例ずつであった。30例のうち25例は未治療のまま受診し,他5例は何らかの治療ののち再発した症例であった。これらに対し,1例に凍結手術を行なった以外は全て外科的切除を行なった。組織学的検索では充実型が15例と最も多く,他型との混在型を含めると全体の50%を占めていた。また断端はいずれもnegativeであった。追跡可能であった26例の術後経過観察期間は3か月から12年6か月に及び平均3年8か月で,この間に3例の再発を認めた。このうち1例は肩甲部に発生した巨大基底細胞癌で再発を繰り返し,およそ5年の経過で死亡している。他の2例はいずれも他医にて放射線治療を受けたのち再発し,当科を受診した症例で,切除標本でも完全切除と診断されたにもかかわらず再発をきたした。組織型と再発の関連性については少数例のため判定できなかった。基底細胞癌は発育が緩徐で,その性格も比較的悪性度が低いとされているが,巨大で組織破壊性の強いものや,放射線治療後の再発例は再発の危険性が高く,また再発を繰り返すものでは遠隔転移をきたし死亡する症例もあるため,的確な初期治療,詳細な組織学的検索,長期に及ぶ経過観察が必要であると考えた。
北里大学の論文
1988-10-31

過去13年間に経験した基底細胞癌の統計学的・組織学的検討

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