腹膜硬化症を合併した長期CAPD患者の1剖検例

概要

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若年性ネフロン癆による慢性腎不全でCAPD (continuous ambulatory peritoneal dialysis)導入し,6年6ヵ月後に死亡した20歳男性の1剖検例を報告した。CAPD導入数カ月後,腹膜炎による除水能低下を起こしたが,約5ヵ月後に回復した。CAPD導入1年5ヵ月以降重症な腹膜炎罹患により除水能低下状態が遷延したが,次第に回復した。しかし,体液貯留傾向のため,3年2ヵ月後より高張透析液を使用し除水量の増加を得たが,3年9ヵ月後に不可逆的な除水能低下状態となった。一方,クレアチニンの透析排液/血漿濃度比(D/P)から見た溶質除去能は,その約半年後まで保たれており,血清クレアチニン値の上昇は軽度であった。剖検にて腹膜の線維性肥厚と高度の内腔狭窄を伴う動静脈硬化を認め,腹膜硬化症と診断した。本例の腹膜硬化症は,頻回の腹膜炎と高張透析液の使用が主な原因と考えられた。腹膜機能を長期に維持するためには,腹膜炎の予防と高張透析液の使用を最小限にすることが重要と考えられた。
千葉大学の論文
1996-08-01