インド日系企業の労働市場 : デリー首都圏の事例分析

概要

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本論文の課題は、筆者がこれまで実施してきた東アジア・東南アジアにおける大都市圏の労働市場の調査事例を踏まえて、国際比較の視座からインド日系企業の労働市場の諸特徴を試論的に提示することである。経済自由化後のインド労働市場の新たな展開と、カースト身分制など同国に独特の社会制度との関連が注目される。事例分析は、筆者が2004年2月〜3月にデリー首都圏で調査した日系企業を対象としている。分析の結果は、日系企業の労働市場が都市組織部門のうちでも先端的な市場と位置づけられること、企業内では管理技術部門・正規生産職・非正規臨時職の3層構成からなる内部労働市場の分節性、限定的な日本的経営・生産システムの導入、労働力供給の地域的閉鎖性と高い流動性、などであり、いずれもアジア各国との比較に基づいてその特徴づけを試みている。インドに独自のカースト身分制と労働市場との関連については、職位構成・職務内容とカースト身分の相関が想起される事例もあるが、今後のさらなる調査を要する検討課題となっている。
北海道大学の論文
2004-12-09