アジア開発最前線の労働市場(1) : アジア国際分業と労働市場研究の課題

概要

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本研究の課題は、1990年代以降に開発工業化の新たな拠点となったアジアの数か国(地域)を事例として、労働市場の再編成の現局面を検出するとともに、その国際比較を試みることである。本章は序章的位置を占めるものであり、分析課題は、アジアにおける域内国際分業と労働力配置の現局面をマクロデータで俯瞰すること、アジア労働市場研究に関する包括的で、しかも先駆的な先行研究の検討、この2つの作業を通して次章(次号以下に掲載予定)以下の個別事例分析の課題を仮説的に提示しておくことである。プラザ合意以降の東アジア国際経済環境の変化、それに伴うアジア域内の投資動向、産業構造、労働力編成の変動をマクロデータで俯瞰すると、1980年代後半以降のアジア諸国には、ほぼ共通して輸出製造業の機械・輸送機器部門あるいはサービス産業部門への労働力移動が急展開し、アジア労働市場の再編成が進展していることが確認された。アジア労働市場研究に関連する内外の先行研究では、フローベルらの新国際分業論、日本の古典的なアジア労働市場論、新中間層、アジア域内経済統合論、開発独裁型国家論、都市労働市場論、日本的経営・生産システム論、などの諸研究の成果について検討を加え、次章以下の分析課題を、労働力の質・量構成の変動、内部労働市場の分節性、労働力の給源問題、日系企業における日本的経営・生産システムの定着度、の4点に整理して仮説的に提示した。これらの課題に基づいて、アジア各国・地域の事例分析を積み重ね、最後の章で横断的な国際比較を試みる予定である。
2001-06-12

アジア開発最前線の労働市場(1) : アジア国際分業と労働市場研究の課題

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