タイ日系企業の労働市場 : バンコク首都圏の事例分析
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概要
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拙著(2002年出版)のアジア労働市場論では, 東南アジアの主要国のひとつであるタイを取り上げることができなかったので, 小論でバンコク首都圏の日系企業調査(2005年3月)のデータに基づいて, タイ労働市場の一端を検討し, 前著を補充することにした。同時に, 他のアジア主要国の労働市場との国際比較の視点にも留意した。 分析結果の要点を指摘すれば, 労働力の需要面では, 入職前の学歴・技能達成度を基準とした労働力配置と分節的な内部労働市場の形成, 入職後は人事考課によって各部門内での「限定された能力主義」管理, 高度専門職に関しては外部労働市場との補完的連結, 短勤続の臨時工=社外工による需要調整などが特徴的であり, これらの諸点の中には他の東南アジア諸国や中国の日系企業との共通点も多かった。供給面では, タイ全国の就業構造のあり方に規定され, 生産職労働者の地方・農村部からの大量流入, 全職層にわたる地縁・血縁の縁故関係に基づく求職, これまた全職層に及ぶ流動性の高さと地方出身者も含めた首都圏労働市場での流動化も特徴的であった。日系企業のような大規模企業における企業内の労働者処遇にみられる職位間格差構造は, タイの労働市場における職種間の階層格差の大きさに相関していると見られる。 最後に「日本的経営・生産システムのアジア型適応」の具体的表れが, 分析的な内部労働市場の形成と限定的能力主義管理であることも指摘した。
- 北海道大学の論文
- 2005-12-08
著者
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