八重山群島(琉球)で採集した日本新産の地衣類9種
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概要
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琉球八重山諸島の地衣類については今日までほとんど研究されていなかった。幸にして, 筆者らは, 国立科学博物館が主宰した琉球列島の自然史科学的総合研究の一部を分担し, 八重山諸島の地衣類を研究することになった。吉村は1973年1月, 陰花植物班の一員として, 八重山諸島(西表島, 石垣島, 竹富島)で地衣類を採集調査した。これらの採集標本は筆者らによって研究中であるが, 今回, 下記の日本未記録の9種について発表することが出来た。これらのうち樹皮生の Coccocarpia fenicis を除くと他の8種はいずれも葉上地衣である。Arthonia macrosperma (ZAHLBR.) SANT. ヨウジョウソバカスゴケ(新称)。大型 (50-62.5×12-13μ) で多室 (8-10) の胞子と長い(約100μ)粉子を持つのが特徴である。今迄マレーシアからのみ知られていた。Byssoloma leucoblepharum (NYL.) VAIN. ヤシノビッソロマ(新称)。子器の縁部が白色で, ゆるくこうさくした菌糸でできているのが Byssoloma 属の特徴の1つである。本種は子器盤が褐色で周辺部は連続している。また地衣体は多少緑色がかっている。熱帯地方に広く分布し, 一部欧州や北米の温帯にも知られている。Byssoloma rotuliforme (MULL. ARG.) SANT. タラヨウノビッソロマ(新称) 子器盤が黒色で, 灰白色の地衣体の周辺部は小部分に分かれ散在しているのが特徴である。熱帯地方に広く分布するが, 北米や欧州の温帯の一部でも知られている。Coccocarpia fenicis VAIN. チヂレバカワラゴケ(新称) 葉状の中型地衣で樹皮に着く。細かい扁平な裂芽を持つのが特徴である。フィリピンで記載されて以来, 現在迄どこからも報告がなかった。Dimerella epiphylla (MULL. Arg.) MALME ウスチャサラゴケ(新称) 淡褐色の子器を持ち, 日本ですでに知られている橙色の子器を持つダイダイサラゴケと区別される。熱帯地方に広く分布している。Mazosia bambusae (VAIN.) SANT. コクテンマゾシア(新称) 4室の胞子を持ち, 地衣体表面に粒状突起があり, その先端に細微な黒点があるのが特徴である。スマトラ, ボルネオ, フィリピン, ニューギニアからのみしか知られていなかった。Mazoasia phyllosema (NYL.) ZAHLBR. ナミマゾシア コクテンマゾシアに胞子の形状など似ているが, 地衣体表面に粒状突起がなく平坦である。熱帯地方に広く分布している。Mazosia melanophthalma (MULL. ARG.) SANT. ハクテンマゾシア(新称)。コクテンマゾシアに似るが地衣体表面の粒状突起が白色である。熱帯地方に広く分布する。Tricharia albostrigosa SANT. ヨウジョウシロヒゲ(新称) 地衣体に白色の毛を持ち, 胞子は巨大な石垣状であるのが特徴である。熱帯地方に広く分布しているがアジアではジャワでしか知られていなかった。
- 国立科学博物館の論文
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