小笠原諸島産の注目すべき地衣類
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概要
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当館の井上浩博士が父島で採集した地衣類39種を1969年に報告したが, それらを含めて小笠原諸島産地衣類として報告されているのは74種である。本報告では1977年夏, 筆者が小笠原諸島の父島および母島で採集した地衣類と既に当館に保存されている標本を検討して, 3種について報告した。Parmelia cristifera TAYL. は熱帯に広く分布しているが, 日本では今回の小笠原での記録が初めてである。Parmelia pacifica KUROKAWA は新種として記載したが, 1969年の報告では P. conformata VAIN. として発表したものである。本種は琉球列島にも分布しており, 西太平洋地域に特産と考えられる。アカチクビゴケ Trypetheliopsis boninensis ASAH. は小笠原特産種と考えられていたが, 琉球, 台湾にも産するこを報告した。なお, Lopadium hiroshii も同様の分布を示す。種子植物については, 小笠原産のものと日本南部の温暖な地方, 琉球, 台湾, 中国南部のものと同一種であったり, あるいは極めて近縁であったりして, 西太平洋における, 植物地理学的なつながりのあることが既に報告されている。地衣類についてはこのような研究はなかったが, Parmelia pacifica, Trypetheliopsis boninensis, Lopadium hiroshii は西太平洋地域に特産と考えられ, 種子植物の場合と同じように, 琉球や台湾と植物地理学的な関連を示しているようである。
- 1978-12-20
著者
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