パプアニューギニア産ウメノキゴケ属追記
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概要
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1979年に著者はパプアニューギニア産のウメノキゴケ属として61種を報告したが,その後さらに検討を加えて,2新種を加え,2種を他の種のシノニムとした。別に報告された1種を加えると,現在までに同地から知られている種は62種を数えることになる。本論文では,さらに2新種を記載し,同地新産の7種を報告し,また一方では,今までに報告されている種を再検討して,P. gemmulosaをP. luteoviridisのシノニムとし,P. schizospathaとして報告された標本はP. planiusculaに同定すべきであることを示した。その結果,パプアニューギニア産のウメノキゴケ属は69種となった。また,本論文では,これらの69種にもとづいて,植物地理学的な簡単な考察も試みた。すなわち,パプアニューギニアのウメノキゴケ属には,熱帯,亜熱帯,時には温帯域まで広く分布する33種の種群と,東南アジア,東アジアに分布の中心をもち,パプアニューギニアを分布の東限とする12種の種群の2つの主要な構成分が認められることを示した。また,この地方特産の種が13種を数えるが,これらは将来周辺地域でも発見される可能性をもっている。ただ,これらのなかでP. praeinsuetaとP. insuetaおよびP. flaccidifoliaとP. acrotrychaはそれぞれ対をなす近縁の種であり,この4種はパプアニューギニア地域で分化したものと考えられる。一方,熱帯アメリカに分布の中心をもち,この地域を分布の西限とする種として4種をあげることができる。パプアニューギニアとオーストラリアは地理的には近いが,いわゆるオーストラリア系と考えられる種としては,P. erumpens, P. haysomii, P. neotinctinaの3種しかあげることができない。さらに,南米から記載された稀種P. subphysodalicaがパプアニューギニアで発見されたことは,その近縁種の多くが新大陸特産であることを考え合わせると,とくに注目される。なお,パプアニューギニア産69種のウメノキゴケ属地衣の検索表を作った。
- 国立科学博物館の論文
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