空間変動のある地震動を受けた地表基礎および埋込み基礎構造物のクロスインタラクション
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概要
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1.はじめに 地震応答解析では、地盤との動的相互作用を考慮する場合でも建物は単独で、基礎は根入れがなく地表上にあるものと仮定することが多い。また、地震動は基礎下のどの位置でも同位相で揺れる自由地盤の動きとして仮定される。本論では、弾性解析の範囲に限られるがこの点を改良すべく、地震動のランダム空間変動がある場合とない場合について、基礎根入れ効果を導入した隣接建物相互作用(cross interation: CI)を比較検討する。2.解析システムとパラメータ 解析モデルは、Fig.1に示すように半無限弾性体と考えた地盤(減衰定数ζ_g、ポアソシ比V、せん断波速度C_s)上で2aだけ離れた幅2l_i(i=l,2)、質量m_i、回転慣性I_iをもつ屋根が高さh_i,の柱で支えられている2つの建物である。基礎は根入れがない場合(地表基礎)とH_iの根入れがある場合(根入れ基礎)を考える。両者の動的剛性や応答を求める際には厳密な理論展開をすることによりCI効果を導入する。質量と高さ、隣接距離などを変えたパラメトリック解析を行い、基礎固定時の挙動を基準として相互比較する。3.運動方程式 Fig.2に解析モデルの変形イメージを示すが、左側の建物について運動方程式をたてると(1)〜(4)式で表される。右側の建物も同様にして考えることができるので、いくつかの式変換を行えば最終的な剛性マトリクスとして(10)式が得られる。4.入力波、5.地震動のランダム空間変動アプローチ 入力はZ方向に伝わるせん断(SV)波とX方向に伝わるレイリー(R)波を考え、Luco&Won(1986)が提案した空間コーヒーレンス関数(13式)を導入し、ランダム空間変動がある場合(RAP)の解析を行い、ない場合(DAP)の結果と比較した。6.解析結果 調和波入力は複雑な地震動の場合の理解の基本でもあるので、ここでは調和波入力を用い、建物の水平応答、すなわちFig.2に示す質量m_1の絶対変位u^lについての結果を以下に比較して示す。6.1 地表基礎単棟の場合 軟弱地盤における地表基礎単棟で階数を変化させたときのSV、R入力時のDAP、RAPの応答結果を比較してFig.3〜Fig.8に示す。縦軸は地盤の応答に対する比、横軸は入力の基礎固定時建物に対する振動数比として規準化しているので、各図で基礎固定時の曲線は共通の基準として扱っており、横軸が無限大のときに応答比1である。各図から以下の点が認められる。1)相互作用を考慮すると、階数が少なく(硬く)なるほど基礎固定時に比べて共振振動数は低くなる(Fig.3、Fig.8)。これは剛の拘束条件から相互作用ばね等の拘束に変わるためである。ただし、入力波の差異や空間変動のランダム性の有無による変化は少ない。2)応答振幅は、基礎固定時に比べて低層ではいずれの場合も小さいが(Fig.3、Fie.4)、階数が増えると大きくなり高層ではほぼ同等か(SV入力)、それ以上(R入力)になる(Fig.6、Fie.7)。3) SVとR入力を比較する、とくに高層になるほどR>SVの傾向が強くなる。これはSV入力が水平成分のみであるのに対し、R入力は鉛直成分があること、さらに高層ほどロッキング応答の要因が大きくなることによる(Fig.6、Fig.7)。4)DAPとRAPを比較すると、SV入力ではややDAP<RAP(2階建ての場合のみ逆)の傾向があるものの、むしろさほど変わらないのに対し、R入力ではDAP>RAPとなり、高層になればなるほど顕著になる(Fig.6、Fig.7)。建物と地盤条件の組合わせの影響を見るために2階と10階建ての場合について解析した結果(Fig.9、Fig.10)では、前者はいずれも軟弱になるほど最大応答値は下がるのに対し、後者は逆の傾向を示し、とくにR入力のDAPが顕著である。6.2 地表基礎2棟の場合 SVとR入力に対する地表基礎の単棟と2棟の場合を比較して、5階建ての結果をFig.11〜Fig.13に、20階建ての結果をFig.14, Fig.15に示す(Fig.12、Fig.15ではR入力のRAP結果は殆ど重なってしまうため図示を省略)。これらの図で最も特徴的なのは、Fig.13のSV入力におけるDAPとRAP、R入力におけるRAPで隣棟間隔に応じて無次元波長λ= 3.5の周期性を示し、いわゆるCI効果が顕著になることであり、基礎固定時の建物の共振振動数ω_lの約0.9倍の振動数の波長λ^^-= 3.49に対応している。ただし、R入力におけるDAPでは周期性を示しながらも、隣棟間隔が広がると単棟の場合に近づくので、ロッキングの影響などにより応答が大きくなるという他の3ケースとは異なった傾向を示す。したがって、建物が隣接している場合にはCI効果が無視できないこと、さらに、R入力の場合には空間変動のランダム性が建物の応答に与える影響が大きいことが知られる。6.3 座込み基礎2棟の場合 2階建ての地表基礎、座込み基礎の単棟と2棟の場合を比較すると(Fig.16〜Fig.19)、いずれの場合も埋込みによる拘束効果で共振振動数は高めに増大している。しかし、振幅に関しては入力波と解析アプローチによる差異が顕著である。すなわち、DAPのR入力では埋込み基礎が地表基礎より目立って大きくなり、CI効果でさらに大きくなる。また、SV入力では埋込み、CI効果による変化は少ないが地表基礎よりは大きくなっている。一方、RAPではどちらの入力波に対しても埋込による応答値の減少が特徴的であり、実験等で確認されている傾向が現れている。7.結論 本論で行った解析から得られた結論は次の通りである。1)建物同士が近接すると共振振動数は高くなる。2)地表基礎の建物の場合、CIを考慮すると隣棟間隔に応じて単独建物より大きな応答を示すことがある。3) RAPによるR入力時の高層建物(10〜20階建て)の応答は、相互作用を考慮すると基礎固定の場合より幾分か大きくなる。4)DAPとは逆に、RAP地表基礎構造物の応答は根入れ基礎と比較して、とくにR入力時に大きくなりCI効果もそれに荷担する。5)R入力の場合、RAPは現実に近い結果を与える。
- 1998-05-30
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