SEC連結基準適用会社における資金情報の有用性(その2)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
SEC連結基準採用会社をサンプルとし,産業効果モデルによって推定した残差リターンに基づく累積平均残差CARを計算し,決算発表された会計情報の内容とCARとの関係を分析することにより,会計情報の有用性の有無・程度を検討する。会計情報としては,(1)連結利益,(2)個別利益,(3)連結営業キャッシュ,(4)個別営業キャッシュ,(5)連結投資キャッシュ,(6)連結財務キャッシュ,(7)個別投資キャッシュ,(8)個別財務キャッシュの8種類である。なお,すべて1株当たりの数値に換算し,また対前期比を計算することにより実際値と予想値との乖離を求め,期待外の結果とする。分析は4つのパートから構成されている。(1)利益情報と営業キャッシュ情報との比較 上記(1)〜(4)の4つの情報について,対前期比がプラスの場合,その情報内容が好材料(good news)と判断し,逆にマイナスの場合,悪材料(bad news)と判断して,情報の好悪とCARとの関係を月毎の変動の形にグラフ化する。その結果,利益情報の好悪は,営業キャッシュ情報の好悪よりもCAR(株価)との関連性が強い。とくに,連結利益情報がもっとも顕著であり,逆に,個別営業キャッツュ情報の好悪は株価に関して殆ど差異をもたらしていない。(2)投資キャッシュと財務キャッシュ情報の有用性 上記(5)〜(8)の4つの情報について,対前期比が増加であるか減少であるかを当該情報の情報内容として,CARとの関係を月毎の変動の形にグラフ化する。その結果,連結または個別の投資キャッシュが増加する場合,-3月まではCARは殆ど上昇しない。また,連結または個別の財務キャッシュが減少する場合,-3月まではCARは殆ど上昇しない。連結財務キャッシュが減少する場合,+1月から+3月までのCARの上昇が顕著である。(3)数量化I類モデルによる会計情報の有用性の分析 数量化I類モデルにより,総合的に会計情報のCARへの影響を検討する。その結果,-3月で決定係数が最大となり,情報の好悪(増減)に対するCARの反応差が最も大きくなる。また,資金情報の利益情報に対する追加情報の有用性についてみると,営業キャッシュにはそれほど大きな追加情報内容がないが,投資キャッシュには連結・個別ともに追加情報内容がある。また,個別財務キャッシュには追加情報内容がないが,連結財務キャッシュには追加情報の有用性がある。(4)回帰モデルによる会計情報の有用性の分析 分析(1)〜(3)までは,会計情報の内容を名義測度でとらえ,当期の会計数値を予想(前期値)と比較し,それの好悪あるいは増減としての情報の有用性を分析したが,ここでは,会計情報の内容を比例測度でとらえ,対前期比の数値そのものあるいは対数変換するにとどめた会計情報を扱う。その結果,連結利益は決算月前および決算発表月前に有用で,CARに対して+にはたらく。営業キャッシュ情報には,連結・個別ともに有用性が低い。また,投資キャッシュ,財務キャッシュ情報は,連結・個別ともに有用であり,とくに,連結財務キャッシュ情報が決算月以後および決算短信発表月以後のCARに対して影響が最も有意で,分析(2)と同様マイナスにはたらく。最後に,日本基準の連結会計制度上,作成・開示が義務付けられていない連結キャッシュ情報は有用であることが判った。
- 1992-12-25
著者
関連論文
- 環境経営に対する経営者の意識構造 : 環境会計普及に向けて (澤 悦男教授退任記念号)
- 1-D-2 特許戦略のための特許情報の計量化 : テキストマイニングを活用した企業の注力技術比較の試み(マーケティング(1))
- 仮想入出力制約を用いたDEAによる持続可能な発展の観点から見た企業活動の評価(意思決定(2))
- 財務諸表による企業倒産の予測(1984年春季研究発表抄録)
- 環境会計情報にもとづく企業の環境保全活動の評価--貨幣尺度で測る環境保全活動と効果の関連性 (「環境問題と経営情報」特集号)
- 会計基準の改定とコーポレート・ガヴァナンス
- 日本企業の経営環境と決算行動および環境会計に関する意識調査2003
- 日本企業の経営環境と決算行動および環境会計に関する意識調査
- 日本企業の経営環境と決算行動に関する意識調査
- 決算行動に関する調査報告
- 棚卸資源評価方法の選択要因 : 決算にみられる企業行動の研究(第5報)
- 減価償却方法選択要因の分析 : 従来と異なる方法を選択した場合(1985年春季研究発表抄録)
- 決算政策の研究 : 繰延資産処理方法について
- SEC連結基準適用会社における資金情報の有用性(その2)
- SEC連結基準適用会社における資金情報の有用性(その1)
- パネルディスカッション(会計操作をめぐる諸問題)
- わが国株式市場の連結資金収支表に関する学習習熟度
- 財務比率分析による邦銀倒産予測モデル構築
- ステークホルダーとの関係でみる企業の持続可能経営
- 企業結合会計方法の論点と解決策 (笠井昭治教授退任記念号)
- 序文 : 年報第20号の発刊にあたって
- 温室効果ガス排出権取引の会計の新展開 (城戸喜子教授退任記念号)
- バッズの認識と温室効果ガス排出枠の会計の論理
- 温室効果ガス排出枠に関する会計の論理 (澤 悦男教授退任記念号)
- 企業評価のための環境開示情報に関する研究
- 公会計の新展開と経営分析
- 研究開発費の会計手続の選択にみる企業行動
- インフレーション下の財務分析 : 一般物価水準修正財務諸表と企業倒産予測モデル
- 財務諸表上の利益(営業利益)の上限と下限の推定 : 決算にみられる企業行動の研究(1984年春季研究発表抄録)
- 減価償却方法の選択要因について : 決算にみられる企業行動の研究
- 棚卸資産特に仕掛品評価方法の選択要因について : 決算にみられる企業行動の研究
- 受注生産品の価格決定方法について
- 投資成果計算に基づく決算政策の分析
- 森脇彬著, 『挫折に学ぶ倒産会社の財務分析-誰がために鐘は鳴るや-』, 税務経理協会, B6版, 234頁
- 企業結合会計方法の選択と企業評価(統一論題)
- 企業の環境パフォーマンスの貨幣評価による経済パフォーマンスへの影響と環境会計 : LIME・JEPIXの利用可能性
- 第11回企業事例交流会ルポ(情報の窓)
- 環境経営ステージを考慮した環境コストと効果の分析モデル : 環境会計情報の時系列分析
- 減価償却方法選択要因としての経営目標 : 「日本企業の経営環境と決算行動に関する意識調査」の分析より
- 環境保全活動の経営分析 : 環境経営ステージを考慮した環境コストと効果 (特集 環境と経済を考慮したビジネスモデルの構築)
- 環境経営分析モデルにおける環境会計情報の有用性
- 1-F-9 IPC分類を用いた分野別出願を考慮した技術的距離 : 技術的距離による特許評価手法の提案(マーケティング)
- 退職給付会計基準対応にみる企業行動の分析(自由論題)
- 会計手続変更の決定時点の分析
- 利益,資金,予測情報の株式市場への効果
- 長期経営計画にもとづく減価償却方法の選択
- 会計手続の変更と中間財務諸表情報 : 我が国企業の決算における会計手続の選択にみる企業行動の研究
- キャッシュ・フロ-情報の意義とその利用可能性-2-株式投資決定における資金情報の有用性
- 葬式のOR : 映画『お葬式』を観て(イベントのOR)
- 環境保全活動の経営分析 : 環境経営ステージを考慮した環境コストと効果