隠居慣行と老親扶養慣行
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概要
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本稿は老親扶養慣行の特殊事例について,その意義と内容を,非「家」的な隠居慣行との関連から検討しようとするものである。西南日本の一部には,「家」本位のあとつぎ長男単独同居扶養制とは異質なかかり子依存の別居扶養制がかなり一般的である。とくに両親の末期の世話と死後の葬送・供養を,父は長男,母は次男が分担する分住隠居制・分牌祭祀制の慣行がある。この慣行は,わが国の伝統的な「家」の相続・扶養慣行とは異質であり,いわゆる「家」制度からずれた非「家」的な家族慣行の特色を示している。これは西南日本に顕著な別居隠居慣行が,「家」の維持・統合という本来の「家」本位的な機能を果たさず,系譜的な「家」を分裂させて伝統的な「家」制度に否定的な役割(非「家」的な機能)を果たしているのと共通である。これらの隠居・相続・扶養に関する特殊事例は,いずれも「家」本位の家族慣行に対する非「家」的な家族慣行として相互に密接な関連をもっており,それはいわゆる「ムラ」本位の社会をその存在基盤としているものである。In this article the author attempts to describe the meaning and the contents of the customary practice of taking care of old parents. This is a part of a comparative study of the traditional family custom of different societies in the southwestern part of Japan. Firstly, I brought out the point at issue concerning this study, and explained the relation between the retirement system and the supporting system. Secondary, I examined the case study about the particular practice of attending old parents lying in bed and holding a religious service for the parents. This system is thought as a survival of a specified type of the old Japanese family system in the village community.
- 大阪教育大学の論文
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