ハルジオンの自然集国と人工集団における花粉流動によるパラコート抵抗性遺伝子の拡散
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概要
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除草剤抵抗性遺伝子は花粉の飛散や種子の散布によって拡散するので, その動態の把握は雑草防除やバイオハザードの管理の上で欠くことが出来ない。つくば市の栗園のパラコート抵抗性個体を含むハルジオンの自然集団とこれより得た後代を使った実験集団において, 個体識別した痩果を集め, それより育成した後代の抵抗性を調べ, 花粉流動による遺伝子の拡散を調べた。パラコート抵抗性は優性の1遺伝子によって支配されるので, 感受性個体の後代に出現する抵抗性個体の出現率は, 抵抗性個体からの花粉流動による自然交雑率である。自然集団(Fig. 1)ではこの交雑率は, 最近隣抵抗性個体(花粉原)までの距離に対して2山型の分布を示し(Fig. 2), 一般的に知られる距離減衰型の分布とはならなかった。4個体の抵抗性個体を36個体の感受性個体で囲ったブロックAと, 感受性個体のみからなるブロックBとブロックCを離して配置した実験集団(Fig. 3)では, 感受性個体後代に出現する抵抗性の出現頻度は, 大きな振れを示し(Fig. 3, 4), 抵抗性遺伝子はブロックAの抵抗性個体に近接した北側の亜ブロックにおいて距離減衰型で拡散したが, 離れたブロックへも高い頻度で拡散した(Fig. 4)。訪花昆虫のうち(Table 1), 送粉効果が高いと推定されるハナアブ類とハチ類は典型的な近隣訪花行動を示したので(Fig. 5), 遺伝子の拡散とハルジオンの平面分布構造との関連を分析した。つくば市のハルジオン自然集団では80 cmおよび160 cmの大きさの集中斑が検出された(Fig. 6)。自然集団での2山型の遺伝子拡散は, 集中斑のある集団では斑内の送粉が緩やかに, 斑間の送粉が速やかに行われ, 送粉効果が集中斑の周辺で大きくなるとしたGleavesのモデルに一致する。この現象は, 除草剤抵抗性を持つ他殖性雑草集団におる遺伝子拡散と栽培植物の近縁野生種への作物品種からの遺伝子侵略において注目すべきである。
- 日本雑草学会の論文
- 1996-10-25
著者
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